<ラグビー>トップリーグ開幕 W杯に向け本格始動
「これまでの東芝ではフォワードがじわじわ、バックスもガツガツ。でも、これでは勝てないと、冨さんが改革。ブレイクダウン(接点)ができた時にそれがどういう状況かを判断して、それを皆で共有できるような練習をしている。ラグビーの根本である1対1、ブレイクダウンに目を背けてしまったところは、春の試合で(悪い方向に)出たんです。新しいトライをするなかでも、原点は変えるべきではないと再認識させられました」。両者の一戦は東京・秩父宮ラグビー場でのナイトゲームとなる。 パナソニック対東芝戦の翌日、熊本うまかな・よかなスタジアムで開幕を迎えるのがサントリーだ。「アグレッシブアタッキング」との哲学は変えず、その手法にアレンジを加えている。現ジャパンのジョーンズが監督をしていた11年度から2季連続で2冠も、昨季は10年度以来の無冠。本社側の意向を受け、大久保直弥監督以外の指導陣の多くがテコ入れされた。迎えられた1人が前キヤノンHCのアンディ・フレンドHCだ。これまでスクラムハーフが軸のシェイプで接点の周りを切り崩してきたクラブに、接点からやや遠いスタンドオフが軸のシェイプにも注力させているようだ。 夏場の練習試合では、接点からのパスを受け取ったフォワードが、その斜め後方で相手との間合いを十分に取ったスタンドオフに球を繋ぐ場面があった。昨年のパナソニックがベリック・バーンズの技術を活かすために行っている形にやや似ているか。「細かいことは言えないですけど、すべての局面で有効的に攻められるように」と日本代表のプロップ畠山健介が言えば、同じくジャパンのスタンドオフ小野晃征は「いままであまりにも9番(スクラムハーフ)に頼りすぎていた部分があった。もう少し10番(スタンドオフ)、12番(インサイドセンター)経由でアタックする感じです」。もっとも、ボールが汗ですべりやすくなる季節のうちは「きれいなラグビーというより、強引にゲインラインを切るように」とも。「10番、12番経由」のボリュームを増やすのは、涼しい季節になってからだろう。 サントリーの新首脳陣は年間計画も刷新した。従来は若手の身体を鍛える時期としていた春先に、今季は多くの練習試合を組んだ。結果、レギュラーメンバーが固まりつつある夏場の試合では、4年目のフッカー小澤直輝、5年目のフランカー西川征克、2年目のウイング中づる隆彰ら、前年度まで控え格だった若手が先発した。生まれ変わりの序章か。年下の活躍を見て日本代表のロック真壁伸弥主将はしみじみ言った。「いまフィットしているのが、これまで新しいサントリーのラグビーを理解しようとしてきた若手。活性化させています。去年までまでハングリーな下積みをしていたから、出た時は、すごいですわ。大丈夫かな、俺」。 トップリーグは初年度以降優勝していない神戸製鋼は、クラブ史上初の外国人ヘッドコーチを迎え入れた。元南アフリカ代表アシスタントコーチのギャリー・ゴールドHCである。「就任前、期待値が高いことはすごく感じました。高いところに目標がある」。守備の組織力と肉弾戦での激しさを注視しているゴールドHCは、自身の指導哲学に「attitude(姿勢、態度)」を掲げる。過去に日本選手権7連覇を果たした古豪とあって実力者は揃っている。あとは「attitude(姿勢、態度)」を喚起させるのみだ、と無意識的に示している。 「おそらくほとんどのチームにいい選手がいて、ラグビーもそんなに変わらない。どちらがよりハードなことをしているか、という部分が差になってくる。ディフェンス練習の強度、激しさを上げました。大事なのはattitudeです。システムの前に」。これらの選手やチームの他にも有名外国人選手の勝負勘とポテンシャル、今季限りで引退するパナソニックの名手センター霜村誠一の渋い光、伏兵筆頭格のヤマハなど、トピックスは多彩だ。 トップリーグは、参加16チームは前年度順位の偶数組、奇数組に分かれてファーストステージを行い(8月22日~10月19日)、ファーストステージの成績の上位陣と下位陣がそれぞれグループを作ってセカンドステージに突入(11月28日~1月11日)。最後はトップ4チームによるプレーオフトーナメントで王者が決まる(1月24日から2月1日)。 (文責・向風見也/ラグビーライター)