<ラグビー>トップリーグ開幕 W杯に向け本格始動
前年度にトップリーグと日本選手権の2冠を獲得したパナソニックは、元オーストラリア代表ヘッドコーチのロビー・ディーンズ氏が監督に就任。パフォーマンス・マネージャーとなったフィリップ・ムーニー氏ら昨季のスタッフは肩書きを変えつつ概ね残留し、中核のボスだけが新しくなった格好だ。ディーンズ監督も昨季からスポットコーチとして守備組織の構成に関与していたとあって、エースの山田も「やることは変わらない。その濃度が濃くなった感じ」。前に出て「外から内」へ追い込む守備陣形、球を奪った際の豊富な攻撃陣形、スタンドオフのベリック・バーンズのコミュニケーション力とキック力からなる陣地獲得術…。強力な手持ちの武器を維持したまま、ディーンズ監督は「選手主体」のスタンスを打ち出しているという。 堀江主将によればこうだ。「例えば、練習が終わりという時にこちらがもっとやりたいと言えば、大概、やらせてくれる。去年までは『明日に響くから』となっていたんですけど」。周りに裁量を与えつつ、静かに舵を取る。前身の三洋電機時代から続く「勝つ時ほどボスが目立たない」の伝統を、ニュージーランド人指導者が無意識のうちに踏襲している。 パナソニックの初戦の相手は東芝。11季連続4強入りも、ここ4季タイトルから遠ざかっているフィジカルチームだ。冨岡鉄平新HCは、2004~06年度の3連覇時の主将で「感謝」が口癖の情熱人である。しかし、中居智昭フォワードコーチは、元チームメイトでもあった船頭を「意外と、緻密」と見ている。「交通整理がうまいな、と。選手のプレーに関して言う時も、去年が『ここがダメだ』だったとしたら今年は『これがウチにとってのいいプレーなんだから、これをしよう』になった感じです」。 練習は部員がグラウンド上の2~3つの区画に均等に散り、チームの戦法に必要ないくつかの戦術確認や技術鍛錬などを同時進行で落とし込む。「他を見てきたわけじゃない」と冨岡HCは言うが、サントリーやジャパンの効率的なセッション進行と通じるところがある。戦術的には、素早くシェイプ(スクラムハーフやスタンドオフといった攻撃の起点の周りに複数人のランナーが予め待ち構える攻撃陣形)を作ってテンポ良く攻める。これまでは1対1の制圧をモットーとしてきたチームにあって、「いままで手をつけなかったことに手をつけてゆくという感じ。ベースは変わってない」と万能フォワードの望月雄太は言う。新要素を打ち出すなか、クラブの伝統的な長所を再点検しているらしい。ウイング大島脩平副将が明かす。