初回から最終回並みの濃さ…深澤辰哉が醸し出す“リアコ感”とは? ドラマ『わたしの宝物』第1話考察
松本若菜主演のドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)が放送開始した。本作は、「托卵(たくらん)」を題材に、”大切な宝物”を守るために禁断の決断を下した主人公と、その真実に翻弄されていく2人の男性の運命を描く愛憎劇だ。今回は、第1話のレビューをお届けする。(文・西本沙織)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
第1話にして最終回並みの濃さ 怒涛の展開に揺さぶられる…。
もしも、夫以外の男性との子どもを妊娠してしまったら。もしも、それが昔愛した人との子どもだったら。このドラマをみたら、自分なりの「if」を考えずにはいられない。 ドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)が、10月17日(木)よりスタート。もう、第1話から衝撃的すぎた…。 描かれるテーマは“托卵”。托卵とは、自分の卵と生まれた雛を他の個体に育てさせる鳥の習性のひとつ。でも、これは鳥に限ったことではなくて。世間には夫以外の男性との子どもを、「夫の子」と偽って育てさせる悪女もいるらしい。 本作の主人公・神崎美羽(松本若菜)は、のちにその悪女となる女性だ。美羽は、夫の宏樹(田中圭)と二人暮らしの専業主婦。彼のモラハラまがいな発言も、口角をキュッと上げて耐え忍んでいる。 無理して笑わなくてもいいのに…とも思うが、本当につらいときこそ明るく振舞ってしまうのが人間。そういった意味では、美羽は一番共感しやすいキャラクターなのかもしれない。 美羽を演じる松本若菜といえば、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)でポジティブかつ豪快なキャラを好演したばかり。西園寺さんを燦々と輝く太陽と例えるならば、美羽は闇夜に浮かぶ静かな月。 それほど真逆な役柄なのに、まったく違和感がない。松本の役者としてのふり幅に驚かされながら、スルスルと物語に没入してしまう。
田中圭が”モラハラ夫”を熱演
一方、夫の宏樹は外面がよく、“理想の夫”を演じるのがうまい。だから傍からみれば宏樹は“いい夫”だし、夫婦仲もよくみえる。でも、美羽に対してはすこぶる酷くて。 「もうちょっとマシな格好できないの?」「封筒ひとつまともに持って来られないなら、家のことくらいちゃんとやって」「暇だから子ども欲しいんだろ」など、 酷烈な発言を集めたらキリがない。 そんなどこを切り取っても理不尽極まりないモラハラ夫を、にじみ出る人の良さを完璧に封じた田中圭が熱演。説得力のある演技で、宏樹という一人の人間を解像度高く表現する。 だからなのか、宏樹を完全に悪者にするにはまだ早い気もしているのだ。宏樹の言葉はどこか自身をさげすむ表現が含まれているし、外に出て生き生きした美羽をみたときは自分のもとに繋ぎ止めようと必死だった。ところどころ“弱さ”が垣間見えるのが、どうしても気になってしまうのだ。 とはいえ、宏樹と暮らす美羽は、まさにかごの中の鳥。ときにはそのかごから抜け出して、空いっぱいに羽ばたいてみたい気持ちもわからなくはない。そんな抑圧された生活が続いたある日、美羽は2歳年下の幼なじみ・冬月稜(深澤辰哉)と再会してしまう。