「自分は宇宙人に誘拐された」と訴える人に共通する、心理的傾向とは?
これらのことから、UFOを目撃することについては、催眠感受性との関連は薄いようですが、アブダクションのされやすさについては、やはり催眠感受性と関係があるようです。 また、アブダクティーはそもそも、イメージを思い浮かべやすく、それに没入しやすいのではないかと考えられます。 クランシーやマクナリーといった研究者はエイリアン・アブダクションの被害者と統制群の人々にこの個人差を測定するためのイメージ没入尺度という心理テストを行いました。その結果、確かにアブダクティーたちはこの傾向が強いということがわかりました(表5-1)。 ● 解離体験尺度の得点が高い アブダクティーの「虚偽記憶」 また、興味深いことにアブダクティーは解離体験尺度の得点が高いということも示されています。これは、自分自身が自分自身でなくなったような感じや、自分が現実とは切り離された状態であるように感じる傾向についての個人差を測定する尺度です。このような状態はアブダクションの際に生じる心理状態に類似しています。 最後に、4つ目の特徴についてはどうでしょうか。前世記憶を思い出す人は実験室でのDRMパラダイムの実験(編集部注/偽の記憶がどのようにして作られるのかを調べるための心理学実験)でもフォールスメモリーを生じさせやすいという研究を紹介しましたが、この現象はアブダクティーたちでも同様に生じるということがクランシーによって示されています。 彼女らは、新聞広告を通じて、次の3つのグループの実験参加者を募集しました。第1のグループは、エイリアン誘拐有記憶群で、自分はエイリアンに誘拐されたと信じ、かつその記憶をもつ人々です。
第2のグループはエイリアン誘拐無記憶群で、身体に残った傷や睡眠中の麻痺などの経験から自分はエイリアンに誘拐されたのは間違いないと思っているが、具体的な記憶をもっていない、まだ想起できていないと思っている人々です。 そして第3のグループは統制群で、エイリアンによって誘拐されたなんてことはないと思っている人々です。 彼らに、DRMパラダイムの実験を行いました。実験では、「チョコレート」、「はちみつ」、「ケーキ」、「ハート」などを連想語として使用して、「甘い(sweet)」をルアー語(編集部注/連想される特定の言葉)とする材料などが用いられました。 この実験では、連想語の数の条件が設定され、連想語が3語、6語、9語、12語、15語の条件がつくられました。この実験の結果を図5-3に示します。 横軸は連想語の数、縦軸は、ルアー語の虚再生率と虚再認率を示します。連想語が多いほど虚再生、虚再認が多いという傾向も見られますが、重要なのは、エイリアン誘拐有記憶群と無記憶群の成績が統制群よりも高くなっていることです。 このことから、アブダクティーも、前世記憶を想起しやすい人と同様にソースモニタリング(編集部注/記憶がいつどこで得られたかという情報についての認識)が正確でないということが明らかになりました。
越智啓太