「どんな症状でも診る」離島・中山間地を支える総合診療医、患者との距離の近さが「面白い」 医師不足に悩む島根・奈良の現場を訪ねた
診療車を訪れた佐藤千賀子さん(67)に宇陀市立病院の佐和明裕医師(32)が問いかけた。「最近調子はどう?まだたばこは吸っている?」「先生、本数がなかなか減りません」。佐藤さんは近所の医院が閉鎖された後、病院に足が向かなくなった。2022年秋に診療車の健康診断で高血圧が判明し、それから月に1度、巡回診療を利用している。「ここは待ち時間も短いし、病院らしさがないのがいい。何でも相談できる」と笑顔を見せる。 佐和医師は「高齢者は最寄りの医療機関まで距離があると、体の具合が悪くても我慢してしまう。普段から気軽に医師にかかれるようにして、受診控えをなくしたい」と話す。 移動診療車は導入に9600万円かかり、維持費は年間で2千万円を超える。採算面からも利用者の掘り起こしが課題だ。宇陀市は巡回診療の日に合わせたイベントや移動販売などで、より多くの住民に利用を呼びかけることも検討している。