スペイン国王晩餐会出席のため一時帰国する乾は「忖度」の犠牲者か?
女性会長のアマイア・ゴロスティサ氏以下の経営陣は、日本市場におけるクラブの知名度アップを含めた国際化戦略を踏み出すきっかけになるとも判断。日本政府からの招待状を受理し、メンディリバル監督を納得させ、常に危機感を覚えながらプレーしてきた乾の背中をむしろ押したとされる。 残り9試合となったリーグ戦で、エイバルは8位と大奮闘している。残留をほぼ確定させたどころか、来シーズンのUEFAヨーロッパリーグ出場権を獲得する6位のビジャレアルに勝ち点4差まで肉迫している。 運命の悪戯か。乾が一時帰国する前の最後の一戦が敵地でのビジャレアル戦であり、2‐1と逆転した後半33分に大仕事まで成し遂げてみせた。後ろ向きでプレーする相手の隙を見逃さず、ボールを奪うとそのまま高速ドリブルで相手ペナルティーエリア内の右サイドへ侵入していく。 左斜め後方から必死のスライディングを仕掛けてきた相手に、怯むことなく右足を振り抜く。対角線上を切り裂き、ゴール左隅へと突き刺さった強烈な今シーズン初ゴールは、その後にビジャレアルに追いあげられたこともあって結果的に決勝点となった。 「やっと、やっと、やっと今季初ゴールが取れました!こんな自分を使い続けてくれた監督、点が取れなくて凹んでる時に声をかけ続けてくれたチームメイト、スタッフ、家族、友達、そしてファンの皆さんにほんま感謝です!!自分の事のように喜んでくれたのがほんまに嬉しかった」(原文のまま) 5試合ぶりの勝利をつかんだ直後に更新した自身のツイッターで、乾は置き土産となるゴールを心から喜ぶ呟きを投稿している。さらには後半17分に受けた警告で、日本滞在中に行われる次節が出場停止となったことを受けて、スペインの国内紙などでは「上手く清算した」とも報じられた。 日本政府から乞われ、クラブからも勧められたなかで決まった異例の一時帰国。救いとなるのは当事者の乾が、憧れ続けてきたスペインの地へ導いてくれたエイバルから託された大役を尊重し、自身が離脱中のチームの勝利を信じながら、胸を張って晩餐会に出席することだろうか。 (文責・藤江直人/スポーツライター)