楽観主義も度を越せば有害になる 3つの兆候
どんな時も、何が何でも前向きでいることが奨励される文化においては、人は楽観的であればあるほど良いとみなされがちだ。しかし、ポジティブさも度を越すと「有害なポジティブさ」に変質する。つまり、楽観主義にこだわりすぎて現実が見えなくなってしまう状態だ。 この現象は「楽観性バイアス」に根差している。ポジティブな情報を好み、最良の結果を期待し、良い記憶だけを持ち続けようとする一方で、ネガティブなことは無視したり軽視したりする心理的傾向をいう。 学術誌Journal of Cognitive Sciences and Human Developmentに掲載された2024年3月の研究では、新型コロナウイルスのパンデミック下で「イイ感じなことだけを受け入れる」メンタリティーが台頭し、常に幸せでいなければならないというプレッシャーを感じる「有害なポジティブさ」と結びついた経緯を考察している。実際、こうした有害なポジティブさは2022年以降に倍増した。この研究は、有害なポジティブさを深刻な問題として認識する必要があると強調している。 楽観性バイアスは一見、保護や防御のメカニズムのように思えるかもしれないが、人生の複雑さ、すなわち人生に欠かせない挑戦や失敗などを十分に経験する機会を妨げかねない。有害なポジティブさがあなたにそれとなく悪影響を及ぼしているかもしれない兆候を、3つ紹介しよう。 ■1. 現実を過大評価し、真実をうやむやにする あなたはしばしば、ポジティブな面だけに注目しようとして、状況のネガティブな面を見落としているかもしれない。これは「楽観性バイアス」の特徴だ。 人には無意識のうちにマイナス面を排除し、より好ましい状態を現実として報告する傾向がある。これには気分を高揚させる効果があるかもしれないが、人生の重要な出来事に対する理解や評価を歪めてしまうおそれがある。 たとえば、何度も約束を破る相手がいるとしよう。それを自分への侮りや相手の時間管理のまずさの表れとして認識するのではなく、「ただ忙しいだけだ」と合理化して問題から目をそらした経験はないだろうか。このような状況では、楽観主義が現実の問題への対処を妨げている可能性がある。