東ティモールの農作物をスマホで運べ―物流改善で現金収入を
途上国の発展を妨げる問題の一つに物流がある。農産物を作っても市場に安く運ぶ手段がないのだ。東南アジアにある東ティモールも深刻な問題を抱えているが、その物流の問題をスマートフォンと専用アプリで解決しようと取り組んでいる日本人がいる。 アプリを開発したボランティアグループ「tranSMS(トランスムース)」の代表で、『「ゴミ」を知れば経済がわかる』の著書がある作家の瀬戸義章さん(29)。物流業界で5年間勤務した経験があり、東ティモールの青年海外協力隊員から「物流問題が深刻だ」と聞き、何かできないかと考えた解決策がスマートフォンアプリだ。 青年海外協力隊は、東ティモールでコメなど農作物の生産向上に努めてきた。しかし、作った農産物を市場に売らなければ現金収入は得られない。 田んぼのある村から市場にコメを運ぶには、運搬トラック1台を3万5千円でチャーターしなければならない。国民の平均月収は約5千円。月収の7倍に相当する額で、一般農家がトラックをチャーターして売りに行くことなどできない。特に市場から遠くに住む農家ほど、農産物を運ぶことが難しいという現実もある。 瀬戸さんが注目したのは、村の商店に品物を運び終えた定期便のトラック。空荷で帰路に就くくらいであれば格安で荷物を運んでもらえると考えた。現地ではインターネットは使えないが、携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)ならよく使われている。 帰路に就くトラックの運転手は、瀬戸さんのアプリで農家に荷物の有無を尋ねるメッセージを送信。運びたい荷物がある農家は、それに返信するというシンプルな仕組みだ。牛ならチャーター料金の10分の1で済むという。運転手も配送料が手に入るという一石二鳥のシステム。 アプリは6月から導入する予定。改善の余地はまだある。瀬戸さんらは、サービスの運用を行わず、あくまでもサービス導入支援に徹する方針だ。低いコストで、現地の人が気軽に使える運送サービスが出来ることを目指す。 瀬戸さんは、「東ティモールのように物流が悪い途上国はまだ多く、他の国でも活用できる」と話している。 (取材協力:READYFOR?)