「習近平がトランプを応援」そう言える5つの経済的側面、トランプが掲げる高関税が長期的には中国を利する
2024年2月7日付Foreign Policy誌で、欧州外交問題評議会シニア・フェローのアガサ-デマレが、トランプは中国製品に高関税をかけると言っているが、中国にとってはトランプが大統領となる方が利益になると指摘している。 トランプが米中貿易戦争をエスカレートさせることを約束していることに鑑みれば、中国は、バイデンが再選されることを望んでいるように考えがちだが、おそらく中国はトランプを応援していると思われる。それには五つの理由がある。 第一に、トランプが大統領となれば、米国と欧州との不和が拡大される。中国からすれば、輸出管理等で欧米が連携して中国に害をなす政策をとることを防ぐことができる。トランプは最近、中国からの輸入に60%の関税をかけると公約したことは中国にとっては痛みを伴うが、大きな視野から見れば、欧米が経済紛争を始めて争うことの方が重要である。 第二に、トランプはロシアに対する制裁を解除するかもしれない。トランプは、ロシアのプーチン大統領と仲良くしようとする。中露の制限のない友好関係のみならず、中国企業がロシアとの取引に慎重になっている今日、トランプが制裁解除すれば、ロシアのみならず中国にとっても利益になる。 第三に、トランプ政権となれば、国際金融システムにおいて、中国の元を米国のドルに取って代わらせるという中国の野望を助けることになろう。 第四に、トランプ政権となれば、新興国からの重要物資の調達における中国の支配を増大させる。トランプは、資源国の途上国を軽蔑し、こうした国とうまく連携できず、現在も重要物資の調達で有利な立場にある中国が地歩を固めることになる。
第五に、米国がクリーン・テクノロジーにまで輸出管理の対象を広げることは、中国を利することになる。共和党は民主党より中国に対して強硬な貿易政策を提唱しているので、再生可能エネルギー、バッテリー技術等クリーン・テクノロジーまで輸出制限が広がれば、米国企業は収益を減らし研究開発を削減せざるを得ず、補助金で支えられている中国企業により有利になるであろう。 このように貿易、制裁、金融、重要物資、輸出管理といった経済分野について見ていくと、トランプ2.0のシナリオは、中国の長期的な利益となる。11月にトランプが勝利することは、中国にとって、混沌、不和、米国の威信への打撃から利益を得るまたとない機会を提供することとなる。 * * *