【二月の勝者】作者語る中学受験「親に必要なのは“経済力と狂気”だけじゃない」|VERY
受験シーズンの今、改めて大注目の漫画『二月の勝者』。作者・高瀬志帆さんに、「中受」をリアルに描く物語が生まれたきっかけをお聞きします。今回は、漫画の制作秘話や見どころを大公開。第一話冒頭の「(中学受験を制するのは)父親の経済力と母親の狂気」という強烈フレーズは大きな話題を呼びました。高瀬さんがこの言葉に込めたかった「真の意味」とは?(『二月の勝者-絶対合格の教室-』©高瀬志帆/小学館)
強烈な“あのフレーズ”の誕生
『二月の勝者-絶対合格の教室-』©高瀬志帆/小学館 ――『二月の勝者』の中で印象的なのが、1巻の冒頭で黒木先生が言った“母親の狂気と父親の経済力”というフレーズです。その言葉が一人歩きして、どれだけ子どもを追い詰めるかや、いかに“課金”して成績を上げるかが重要だと誤解する人もいます。作品をちゃんと読めばそうではないことはわかるのですが、そのフレーズに込めた想いを改めてお聞きしたいです。 高瀬志帆さん(以下、敬称略):漫画という媒体の特徴として、作品をヒットさせないと連載を続けられないという部分がありまして、まずはフックのようなものを仕掛けないといけないんです。中学受験自体はだいぶニッチな世界なので、それを『週刊ビッグコミックスピリッツ』という全国で読まれている漫画誌で描く上で、話題性を狙って、取材の中で得た中でも強いワードを選んで使いました。 ――強烈なフレーズなので、現実の取材の中から出た言葉であることに驚きました! 高瀬:ただ、漫画の中でのこのセリフは、既に1月の前受けで上位校に合格してちょっと油断しているような子がいる場で、気を引き締めるために黒木が生徒たちに言ったことであって、親御さんに対して言った言葉ではありません。しかも、母親の狂気というのはお皿を投げるとかそういうことではなくて、たとえ追い詰められた状況になっても親は俳優ぐらいの覚悟で子どもの前では平静を装う、ということ。フレーズだけが一人歩きして、これがすべてと思われてしまっているのは作者としてはだいぶ不本意なのですが、どういう意味なんだろう?と思って読んでもらえたら、というのがきっかけでした。