キャッシュレス決済の手数料負担感大きく「可能ならば現金でのお支払いを」 島根、鳥取の個人事業者ら苦悩「導入するには余力がいる」
会計時に普及するキャッシュレス決済の手数料が、個人経営の飲食店などの経営の足かせになっている。クレジットカードや電子マネーの決済では、売り上げに対し1~7%程度の手数料を店側が負担する。キャッシュレス化のニーズは高まるものの、手数料や初期費用の負担が壁となり、個人事業者らは頭を悩ませている。 【消費全体に占める割合】キャッシュレス決済、4割達成へ 過去最高更新も世界では低位
「申し訳ございません。可能ならば現金でのお支払いをお願いできませんか」。米子市熊党の飲食店「しゃにしゃに食堂」の店員が来店客に頭を下げた。 スマートフォンの決済サービス「PayPay(ペイペイ)」にも対応してはいるが、「手数料が負担になる」と現金での支払いをお願いしている。 PayPayの手数料は1・6%か1・98%。週休2日の同店では、仮に1カ月間の決済が全てキャッシュレスになると、1日の売り上げに相当する約3万円が手数料でなくなる計算だ。「学生たちは電子マネーでお小遣いをもらう場合もあり、やめるのは難しい」としつつ、「手数料で売り上げが無駄になる負担感は大きい」と吐露する。 金融機関のATMから現金を引き出す手間やレジでおつりを待つ時間がなくなるといった利点から、キャッシュレスの需要は高まる。フコク生命の23年調査では、都道府県別で20~50代男女の利用割合は、島根県が96・1%、鳥取県が97・2%。島根県の1人当たりの月間平均決済額は5万2259円で、同県の1人当たり所定内給与(賃金構造基本統計調査の23年速報値、残業代など除く)26万8700円の19・4%に上った。
キャッシュレスの利用は広がる半面、個人商店など売上規模が比較的小さい事業者ほど導入に伴うコスト負担が大きく、二の足を踏むケースがある。 松江市砂子町の飲食店「とんかつたていし」は、「お会計は現金のみでお願いします」と店内に掲示する。キャッシュレス導入では、手数料のほかに、端末などの初期費用が3万~5万円程度、システム使用料が月間3千~8千円ほどかかる。店主の立石英司さん(66)は「導入するには余力がいる。キャッシュレスにしてメニューの料金を上げるようでは意味がない」と語った。 一般社団法人キャッシュレス推進協議会(東京都)の福田好郎事務局長は「キャッシュレスの導入だけで売り上げ増は難しいが、使えないだけで来店を辞める人がいる」と指摘。「手数料を軽減し、導入のハードルを低くする環境づくりも求められる」とした。