ビール飲むのもストレスたまる、米国流のチップが英国パブ文化を侵食
デジタル決済サービスを提供するドジョが調査した英国のカード取引に基づくと、パブやバー、ナイトクラブはチップ支払い回数がいまや英国で2番目に多い業種で、タクシーや美容院よりも多い。パブやバーなどにレストランとカフェを加えた上位2業種で、英国全体で支払われるチップの90%余りを占める。
賃金と食材費の上昇で利益が圧迫されているパブチェーンは、従業員確保の一助にもしようとチップや関連手数料の引き上げをもくろむ。10月にはサービス料収入の留保を雇用主に禁じる規則が発効することも、収益の悪化に拍車をかける。
「ホスピタリティー業界が十分な従業員を採用し、つなぎ留めておくことは厳しい状況だった」とパブチェーン経営、フラー・スミス・アンド・ターナーのサイモン・エメニー最高経営責任者(CEO)は語る。「チップを得られる機会があるというのは、この業界にとって人材つなぎ留めの大きな手段だ」と続けた。同社ではチップは全額従業員に支給しているという。
レインさんがいたパブ「フェニックス」では、ラガー「カムデン・ヒルズ」がパイント2杯で14.6ポンド(約2850円)、これに支払時のカード読み取り機では12.5%、15%、20%のチップを選ぶよう表示が出る。
レインさんのグループにいたIT関連の仕事に就いているラジ・ドディアさん(49)は、米国と同様にチップの制度には低賃金を埋め合わせるパブ経営者の意図が働くと考えている。「行き過ぎだ。自分にとっては悩みの種だ」とチップの広がりについて語った。
チップには皮肉な歴史がある。一説によるとチップは400年ほど前に英国の酒場で始まった。それが欧州から米国に広がり、米国では南北戦争後に奴隷から解放された人々の賃金を抑えるため、鉄道会社プルマンなどの雇用主が積極的に取り入れた。
原題:American-Style Tipping Is Now Testing Pub Culture in Britain(抜粋)
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Anthony Palazzo, Angela Feliciano, Sabah Meddings