球界大御所が球団トップの電撃辞任で揺れる阪神に緊急提言「GM制度を復活せよ!」
阪神の揚塩健治球団社長が、球団の管理不足も遠因となり、新型コロナウイルスの感染者を3月、9月と2度にわたって出した責任をとる形で辞任を表明した問題の波紋が広がっている。そんな中、巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた“球界大御所”の広岡達朗氏が「阪神はGM制度を復活せよ」と緊急提言を行い、抜本的改革の必要性を説いた。“サラリーマン社長“の辞任で、一連の騒動の幕引きを図るのではなく、組織の見直しに乗り出す必要があることを指摘した。
サラリーマン社長の辞任では何も変わらない
球界大御所は、阪神の球団トップの電撃辞任をまったく評価していない。 「新型コロナは恐ろしいウイルス。たとえ万全の予防対策をしていても感染は防げなかったのかもしれない。だが、阪神の場合、選手が感染リスクのあるところで会食するなど、球団の管理があまりに杜撰だった。福留のようなベテランが球団が作ったルールを破ったのには失望した。誰かが責任を取ることは、当然だと思うが、球団社長を辞任したところで電鉄本社のどこかのポジションに帰るだけの話。単なる逃げだよ」 広岡氏の言う通り、阪神の場合、球団社長の職を辞しても、電鉄本社に“人事異動“するだけのこと。失業してしまうわけではない。 揚塩社長は、辞任理由を新型コロナの感染者を出した管理不足に対する責任だけではないと説明したが、実際、社長就任以来、金本監督の不可思議な電撃辞任や、鳥谷敬の退団などドタバタを繰り返した。 広岡氏は、「サラリーマン社長が球界を騒がせたことへの責任を取らされただけで、このままじゃ阪神は何も変わらない。大切なのは、これを機に組織をどう変えるかだ」と主張した。 後任社長も決めず、阪急阪神HDの“圧力”と世間体だけを気にしてトップの“クビ“を差し出し幕引きを図ったところで、球団の組織の体質を変えない限り何も変わらない。
広岡氏は、こんな提言をした。 「私は阪神が変革するためのチャンスだと思う。そのためには、身を挺して阪神をなんとかしようという人がフロントに来なければダメだ。そして野球を知っている人間をフロントに置くこと。中村が亡くなってから阪神は、GM制度を止めてしまっているが、もう一度、GM制度を復活すべきだ。アメリカと違って日本のGMに権限はないが、阪神は、あまりに現場に任せっきりで、フロントが方向性を示すことができていないように見える。フロントがグラウンド内外で、現場、選手を管理できていない。監督と同じく結果が出なければクビを切られるという立場で5年なら5年の時間を与えてGMと契約すればいい。サラリーマン社長と違って本気で改革をやるだろう」 阪神は2012年オフに坂井前オーナーの肝入りでGM制度を導入。元阪神監督で、オリックスでGM、監督を経験した中村勝広氏をカムバックさせ初代GMに任命した。中村氏は、スカウト部長、編成部長を統括し、現場と球団とのパイプ役になるなど、奮闘していたが、2015年9月に遠征先の東京で急死。以来、阪神はGM職をこの5年間、置いていない。 GM不在の間に何が起きたかと言えば、現場主導型の球団運営である。新外国人の選定やFAなどの戦力補強についても、監督の意見が最優先。言い方を変えればフロントは、監督に編成の責任まで押し付けてしまっているのだ。監督と正面から議論を交わすことができ、監督の意見は参考にとどめ、責任を持って最終決断を下すスペシャリストが球団内に不在なのである。 その体制に危機感を抱いた藤原オーナーは、昨年オフにGM制度復活の検討を、その人選も含め球団に指示したらしいが、GM適任者が不在との理由で前に進んでいないという。