アングル:米大統領選、セレブの影響力は 激戦州で俳優ら「最後の訴え」
Lisa Richwine [ロサンゼルス 21日 ロイター] - 11月5日に迫る米大統領選に向け、民主党候補のハリス副大統領を支持するハリウッド俳優らが激戦州での「最後の訴え」に一役買っている。 テレビドラマ「エイリアス」などで知られるジェニファー・ガーナーさんは激戦7州の一つ、アリゾナ州ツーソンの喫茶店で開かれた女性集会に参加。「俳優仲間や友人のジェシカ・アルバやケリー・ワシントンも明日ここに来る」と語り、今回の大統領選が「本当に重要」などとハリス氏への支持を呼びかけた。 こうしたセレブは、選挙を控えて有権者を動員するためのPR活動の戦力とされる。アリゾナ州訪問の翌週、ガーナーさんはペンシルベニア州で街頭演説を行うほか、別の激戦地であるネバダ州も訪れる予定だ。 また、ジュリア・ロバーツさんは地元ジョージア州を訪問。気候変動対策の運動に取り組むジェーン・フォンダさんは、ミシガン州で戸別訪問を行い、ハリス氏らの政策を訴えた。オスカー俳優でもあるフォンダさんは、長年の政治活動で初めて大統領の戸別訪問をしたと明かし、ハリス氏当選に向け「できることは全てやっている」とある有権者に語りかけた。 ハリウッドはリベラルというイメージが強いが、共和党候補のトランプ前大統領への投票を呼びかけるスターもいる。俳優のデニス・クエイドさんがカリフォルニアのトランプ派集会でスピーチしたほか、ミュージシャンのキッド・ロック、共和党全国大会で演説したプロレスラーのハルク・ホーガンなどがいる。 <有権者への影響はあるのか> こうしたセレブの支持は有権者の投票に変化をもたらすのだろうか。 南カリフォルニア大学シュワルツェネッガー研究所の政治学教授で学術ディレクターのクリスチャン・グロース氏によると、セレブの運動参加によって投票へのメッセージは増幅される。ただ、投票率上昇につながるかどうかは、その著名人や状況次第だという。 例えば、元人気司会者のオプラ・ウィンフリーさんは2008年大統領選に向けてオバマ元大統領支持を表明し、民主党予備選で100万票を集めたとされている。 また、非営利団体「Vote.org」によると、ポップ界の大スター、テイラー・スウィフトさんは昨年、超党派向けに有権者登録を呼びかけ、多くの新規登録につながった。スウィフトさんは先月、ハリス氏を支持を表明した。 一方、著書「Celebrity Influence」(「セレブの影響力」という意)などがあるセント・メアリー大学准教授のマーク・ハーベイ氏は、追い風になるとは限らないとみる。 ハーベイ氏らは、スウィフトさんの支持表明前の8月に1000人を対象に調査を実施。半数に投票を促す一般的なメッセージとともにスウィフトさんの写真を見せ、半数には民主党への投票を促す同じメッセージを見せた。 調査では、一般的なメッセージを見たスウィフトファンは投票に行く可能性が高いことが示されたが、スウィフトさんが民主党への投票を呼びかける写真を見たファンの投票意向は低下したという。 ハーベイ氏はこの結果について、「エンターテインメントと政治を一緒にしたくない人が多いのだと思う」と語った。 また前出のグロース氏は、コアなファン以外ではセレブの支持表明は投票率に「何の効果もない、またはわずかな効果しかない」という研究結果もあると語る。 それでも、大統領選や連邦議会が数百票から数千票の差で決まる可能性もある。グロース氏は、選挙で最も重要な部分ではないものの、「熱意と興奮、そしてハリウッドのちょっとした華やかさで人々を動員できるのは確かだ」と述べた。