「あまりに無謀で、迷惑」富士山にピクニック並の軽装で弾丸登山、寒さしのぎに山荘へ無断侵入、大量のゴミ…大混雑で世界遺産〝取り消し〟懸念の声も どうすれば?
「もう積めないから下山しないといけない。2日に1回は捨てに下りている。持ってきた物くらい、自分で持ち帰ってほしい!」 ▽宿泊予約が殺到し、サーバーダウン 登山客による混雑は、春の段階から予想されていた。 ある山小屋では、5月上旬に宿泊予約の受け付けを始めると電話が鳴りやまず、サイトへのアクセスも集中してサーバーがダウン。予約はあっという間に埋まった。 受け入れ人数は、新型コロナの制限緩和後の現在も、感染対策のためかつての6~7割に制限している。一方で予約は「過去に類を見ない過熱ぶり」(山小屋関係者)。その結果、宿泊場所を確保できず、寝ないで頂上を目指す「弾丸登山」が増えることが懸念されていた。 このため静岡、山梨両県は事前対策に力を入れた。 静岡県は英語と日本語で登山ルールを紹介するユーチューブ動画やチラシを作った他、関連の記事を外国語に翻訳し、交流サイト(SNS)を活用して外国人コミュニティーにも情報が広がるようにした。
山梨県は、麓から5合目を結ぶ有料道路「富士スバルライン」の夜間営業時間をシーズン中は短縮し、観光客を抑えようとした。 さらに、山梨県側の複数の自治体や山小屋関係者が6月、県に登山者数の制限を要望。当初は消極的だった山梨県も方針転換し、「混雑して危険な場合は山梨側の登山道を規制する」と決めた。具体的には、山梨県側の吉田ルートで「1日当たりの登山者数が4千人を超えた場合」を一つの目安とし、警察官が一時的に人の通行を止め、人数を絞りながら順次、頂上を目指してもらう方法を検討していた。 ▽無謀登山「よく無事で…」 実際にこの規制が適用されることはなかった。それでも、お盆休み中は、山小屋に宿泊できなかったり、疲労がたまったりして山道で仮眠を取る人が相次ぎ、混雑に拍車をかけた。 9月上旬にはメキシコと米国籍の男子大学生2人が、下調べをしないまま弾丸登山を強行。整備されていない森の中を突き進んで道に迷い、電話で助けを求めた。要請後に電話のバッテリーが切れて連絡が取れなくなり、濃霧も相まって捜索が難航。2人は途中ではぐれたのち、それぞれ自力で山を降り、4~5合目付近で救助された。