「美少女」から取りこぼされたキャラクターとは。BUGで『キャラクター・マトリクス』開催中
胎蔵界曼荼羅とキャラクター選択の共通点
影山紗和子の映像作品は、「地上」から「地下」に行く導線上にある。「自由気ままを愛するキャラクター達をいっぱい描いています!」という影山は、本展にはTVをテーマにしたアニメーション群を展示。目がキラキラと輝くキャラクターたちが、天気予報やテレビショッピングといった番組に登場している。 たかくらの新作『伽羅選曼荼羅』は、「地下」の突き当たりに展示されている。 そもそも曼荼羅とは、たくさんの仏が規則正しく並んだ絵のことで、複雑なお経の内容を絵にした「見るお経」とも言われている。『伽羅選曼荼羅』は、なかでも胎蔵界曼荼羅をもとにしている。胎蔵界曼荼羅は、すべての仏は大日如来から生まれ、人々の心の中にある「さとり」を開くもとを、大日如来が育てていくようすを表しているものなのだという。
地下世界に広がる「儀式」の意味とは?
会場のそこらじゅうに、九鬼知也の「陶フィギュア」が配置されている。煩悩と同じ数である108体を、本展のためにつくりあげたのだという。「地上」にもあるが、「地下」のある一角にある「陶フィギュア」たちは、何やら儀式をしている様子だ。 儀式の一角はちょうど、平山の『ハニラ』の真下で行なわれている。会場の設計図をはじめ、設営の際に使われた電動ノコギリや資材がわざと近くに配され、そのなかで何か道具のような「陶フィギュア」を捧げているように見える。この儀式を起点にして、この会場が立ち上っているようにも思える構造となっている。 たかくらは「儀式」について、「フィクションと現実のあわいにあるもの」と説明する。 本展は、キュレーターであるたかくらが仕掛けた「マトリクス」の構造と「儀式」に込めた意図、そして、それぞれのアーティストが作品に込めた物語(もしくは物語を内包しないこと)とが、幾重もの意味の層を成しているように感じた。
テキスト・撮影 by 今川彩香