HITOGOTO/GEMN、中島健人歌唱の2曲が同時にバイラルヒット “表現者”としての実力に再注目
「ヒトゴト feat. Kento Nakajima」細胞レベルに染み込むリズム感
「ヒトゴト feat. Kento Nakajima」を軸に、中島健人というボーカリストについて掘り下げていきたい。リズムを刻むようなAメロでは、しっかりリズムを捉え、寸分違わぬジャストなタイミングで一音を鳴らしているが、言葉毎の最後の母音の抜きのニュアンスを使い、メロディを滑らかに繋いでいる。メロディパターンを考えれば、リズム重視で一音一音切るようなアプローチになるのが普通だと思うのだが、そこに中島は母音の抜きの余韻という、相反する要素を加えているのだ。このような歌い方ができるのは抜群のリズム感があってこそだと思うが、中島の場合、意識しなくてもリズムを刻める域に達しているように感じる。これまでの活動の中で、身体、もっと言ってしまえば、細胞レベルにリズム感が染み込んでいるのだ。ゆえに、リズム重視の楽曲でも表現に幅があり、それがボーカルの余裕につながっているのだと思う。 楽曲1曲を通して、母音のニュアンスも、吐息のようにアンニュイなパターンもあれば、半音上がるようなニュアンス、トーンの途中で喉を開いてストンと低音に落ちてくるパターンなどじつに多彩。アドリブ一つをとっても、ハミングのようなパターン、母音を軽く発音して並べるパターンなど、細かくアプローチを変えていることがわかる。ラップパートは、子音をあまり強く発音せず、さらに地声に近い声を使うことで、他のパート(歌う部分)との境目をあまり感じさせず、シームレスに聴かせることに成功している。対してサビは、他の部分と比べると、かなりストレートなアプローチをしている。高音ではファルセットも一瞬登場するが、地声をクリアに響かせている。その分、低音に降りてきた時に、その音域で鳴らされる声の良さがとても印象に残る。 この夏、ボーカリストとしての実力を“発掘”された中島健人。表現者として、今後どんな活動を展開していくのか、楽しみである。 ※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2024-08-14
伊藤亜希