パレスチナより「敵国イスラエル」を熱狂的に支持するイラン人の胸の内 中東への“嫉妬”に悶える『イランの地下世界』
犬猿の仲であるイスラエルとイランの緊張が、ガザ情勢をめぐり高まっている。だが市民レベルでは、多くのイラン人が同胞のパレスチナよりも、仇敵イスラエルに共感しているのが実情だという。新著 『イランの地下世界』が、周辺の中東諸国に対するイラン人の本音に光を当てる。 【画像】パレスチナより「敵国イスラエル」を熱狂的に支持するイラン人の胸の内 中東への“嫉妬”に悶える『イランの地下世界』
先を越された!──中東諸国への屈折した思い
イランと歴史的、文化的に近しい関係にある中東諸国との関係も、イスラム革命を境に大きく変容した。 革命後のイランは、イスラムをイデオロギーに中東地域での影響力拡大を図ってきた。とくに、パレスチナや、アサド政権のシリア、レバノンおよびイラクのシーア派組織、そしてイエメンのフーシ派などが、イランの支援を受けていることはよく知られている。 しかし、当のイラン国民はといえば、こうした国々に対して、ほとんど何のシンパシーも感じていない。反体制デモのたびに必ず叫ばれるスローガンのひとつ、「わが命、捧げたい! ガザでもレバノンでもなく、イランのために!」は、そのことを象徴している。 信じられないかもしれないが、2023年以来続くイスラエルによるガザ侵攻では、若者を中心に多くのイラン国民がイスラエルを熱狂的に支持している。 もちろんその理由は、パレスチナ支援を続けるイラン政府がそもそも彼らの敵だからで、ここまで来るともはや「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」式の感情論に思えなくもない。 ただ、考えてみればパレスチナ人やレバノン人も、イスラム教徒とはいえ一般のイラン人にとっては所詮、外国人である。「イラン政府は、外国人ではなく、まずは食うや食わずのイラン人を救え」という論理は至極まっとうではある。 しかも、イラン政府が支援する外国人というのは、実はみなアラブ人である。一般のイラン人は基本的にアラブ人が好きでないばかりか、イスラム体制そのものを「アラブ人によるイラン支配」とすら考えているのだ。 2022年のデモの際には、この説を裏付けるかのように、アラビア語を話す治安部隊員の姿をとらえた動画が拡散されたため、イラン人の反アラブ感情は一層激しくかき立てられた。 どうやらイラン当局は、「治安部隊がイラン人だとデモ隊に対して非情に徹しきれない」と考え、国外で養成した子飼いのアラブ人勢力の一部を、デモ弾圧のために利用しているようなのだ。 ※ この記事は 『イランの地下世界』からの抜粋を編集したものです。
Satoshi Wakamiya