進化した食品製造ロボ、繊細な食品も扱える秘密【FOOMA JAPAN 2024】
食品製造プロセスの機械化に関する恒例の展示会「FOOMA JAPAN 2024」が開催された。食品分野独自の課題は依然としてあるものの、ロボットは精度も速度も徐々に向上しており、使い方次第では現場戦力になる。そもそも求められている基本的な役割は他産業と同様で、労働集約的なピック&プレイスの自動化と、そのためのハンドや動作教示を容易にする技術である。食品製造ロボットの現在地について、不二精機やFingerVision、Thinker、コネクテッドロボティクスなどのスタートアップの取り組みを見てみよう。 【詳細な図や写真】不二精機 自動弁当盛り付けライン(写真:筆者撮影)
不二精機のネタ載せまでできるすしロボット
国内トップシェアを持つおにぎりマシンや、麺をほぐして定量盛り付けられる機械で知られる不二精機は、今回のFOOMAでは従来の機械に加え、ライスバーガー成形ライン、省スペースの弁当盛り付け機や、一気通貫でご飯、少量パスタ、そしてカツを斜めに切って盛り付けて弁当を完成させるラインなどを出展した。 最大4枚の刃物を使い、単にカツを切るのではなく「斜めに切って」盛り付けるのである。 よく弁当にのっている、あの形態だ。任意の角度で斜めに切って盛ることで、よりボリュームがあるように見せられるのだ。カツ以外にもチキンも同じように切って盛り付けることができる。よくぞここまでと思ったが、このような工夫がないと現場には使われることがないということだろう。 気になる生産個数は現時点では1時間あたり600個で、今後、スピードアップさせていく。もっとも、人が不要なので、現時点でも人がおさえられない時間帯でもラインを動かして生産できる強みはある。 2022年のFOOMAのときに筆者が「感動した」と書いた「おにぎり達人」も健在で、オーダーにしたがって人がマシンを使ってどんどんおにぎりを作って提供しており、当然のことながら今回も行列ができていた。 驚いたのは、以前出展されていたロボットを使ったすしネタ自動盛り付けシステムが一気に進化して、実用的なものになっていたことだ。シャリ玉を作るだけのロボットではない。すしネタを事前にセットして冷蔵で保存しておいたトレーからロボットがネタを2つ同時に取って、シャリ玉の中心を認識して的確に置いていくのだ。速度は1皿あたり5秒。最大生産能力は1時間で1000枚だという。 不二精機 寿司ネタ自動盛り付けシステム 不二精機 常務執行役員で営業管理本部 統括の島田 政昭氏は「スピードアップと確実性を大幅に向上させた。シャリ玉の中心にバッチリ載せられる。ハンドも2貫載せできる新しい方法にたどり着いた」と語る。デモではまず失敗しなかった。 比較的、人の近くで動かすことになるシステムだが、協働ロボットではなく産業用ロボットを使っているのは動作速度の問題だ。今回のデモではレーザーセンサーを使って安全対策を施していた。実際にはロボットは天づりにし、システムを丸ごとケースに入れるかたちで人と仕切って運用することを想定しているとのことだった。実際に顧客から声がかかれば店舗での検証を踏まえて提供できるという。 トレーにネタをセットする手間は必要だが、動かし始めれば、人と比べても遜色ない速度ですしを作っていくことができる。回転ずしのバックヤードで動かすのはもちろん、あえて見せるかたちにするのも面白そうだ。さまざまな可能性がありそうに思えた。 なおこのロボットは、以前本連載でも紹介したロボットスタートアップのZen-Saiと共同開発しているものだ。Zen-SaiはFOOMAでは不二精機のこのロボットのほか、串刺し機で知られるコジマ技研のブースでは以前から共同開発している食材供給ロボットを出展していた。串刺し機に食肉を提供していくロボットである。