日産が中国の工場停止、BYDの猛攻に日系車陥落、世界最大の中国市場で日系の「リストラドミノ」
日産は中国市場での挽回策を打ってはいる。 常州工場の生産停止が明らかになる直前、東風日産は2003年からの累計販売台数が1600万台を突破したことを発表。今後3カ年にわたる「新奮闘100」の行動計画を策定した。 今年3月からは、北米で主力のSUV「パスファインダー」を中国向けに展開。このほか2026年度までに日産ブランドでNEV5車種の新型車を投入する。こうした施策で3年後に20万台増の100万台回復を目指す。
今年1~5月の累計販売台数は前年同期比1%減。ここ数年、年2桁減が続いてきたことを思えば、ようやく底が見えてきた。ただし、これも「値下げによる効果が大きい」(みずほ銀行上席主任研究員の湯進氏)。実態はむしろ厳しさを増している可能性がある。 ■BYDの攻勢で顧客を奪われる 日産の中国事業は、販売台数の約半数を小型セダン「軒逸(シルフィ)」が占める一本足打法。シルフィは長年、中国の乗用車市場でトップを守ってきたベストセラーカーでもあった。そのシルフィの市場を狙って、2023年に現地EV最大手のBYD(比亜迪)がPHVの小型セダン「秦PLUS」の価格を下げてきたのだ。
日産は多くの顧客を奪われ、シルフィは秦PLUSに販売台数で抜かれた。競合に対抗するためか、シルフィの小売価格は少し前の10万元(約220万円)から、ディーラーによって足元は7万元(約150万円)に値下げされている。 湯氏は、「日産の生産体制はまだ過剰である可能性が高い」とも指摘する。例えば、高級車ブランド「インフィニティ」は、年間販売台数が2017年の4.8万台から、2023年は6691台に激減。2024年は月に200台程度しか売れていない。
2014年からインフィニティを生産する襄陽工場(湖北省)は、インフィニティだけで年6万台以上の生産能力を持つとみられる。 BYDの王伝福会長は、今年3月の投資家向け決算説明会で、「(日系を含む)外資系ブランドのシェアは現在の4割から、今後3~5年で1割に低下する」という予測を語っている。 販売減少と価格競争の激化という2つの難題に直面しているのは日系ブランドに共通している。日産にとっても、日系合弁にとっても、中国での生産能力適正化は始まったばかりだ。
秦 卓弥 :東洋経済 記者