『虎に翼』には“喫茶店”が3つも登場 朝ドラにおける“出会いと別れ”の重要な役割に
『虎に翼』(NHK総合)第17週より、涼子(桜井ユキ)と玉(羽瀬川なぎ)が経営する喫茶「ライトハウス」が新たな舞台として加わっている。朝ドラにおいてはほとんどの作品に登場する喫茶店。本記事では、近年の朝ドラで特に喫茶店が印象深く描かれていた作品を振り返っていきたい。 【写真】『ブギウギ』で喫茶店の役割を果たしていた伝蔵のおでん屋 ■『ブギウギ』(2023年度後期) 『虎に翼』の前期に放送されていた『ブギウギ』では、物語の序盤に喫茶「バルボア」が登場している。ヒロイン・スズ子(趣里)が、演出家の松永(新納慎也)に愛の告白をする場所だ。それは梅丸少女歌劇団のライバルである日宝に移籍しないかと誘われ選択を迫られている時であり、ここでスズ子は初めての失恋を味わうこととなる。 また、バルボアは羽鳥(草彅剛)の妻・麻里(市川実和子)がかつて働いていた場所。30日間アイスコーヒーを注文し、「ナイスコーヒー」と言って笑ってくれたら告白しようと決めていたという、なんとも羽鳥らしいユニークな馴れ初めがある。 『ブギウギ』の公式Instagramでは、バルボアという店名は「パナマの通貨単位で港の名前」からきており、「太平洋を発見した航海者の名前」でもあることが明かされている。そのため、内装はパナマの国旗をイメージして、赤と青を基調に。「港は出会いと別れの場所。この喫茶店でどんな出会いと別れがあるのか、見守ってください」と綴られている通りに、バルボアはスズ子や羽鳥にとっての出会いと別れの場所として機能していた。 ■『舞いあがれ!』(2022年度後期) 『舞いあがれ!』では、ヒロインの舞(福原遥)と久留美(山下美月)がアルバイトしていたラグビーをコンセプトにしたカフェ「ノーサイド」が登場。久留美の父・佳晴(松尾諭)の津田(たくませいこ)へのプロポーズシーンが印象深いが、舞と貴司(赤楚衛二)の結婚パーティーや舞のラストフライトの中継を、なにわバードマンの同窓生たちや航空学校時代の同期が集い見守っていたりと、長きに渡って様々な場面の舞台となっている。 そこは“柏木公園”と呼ばれた舞と貴司が互いの気持ちを確かめ合った公園と同様に、制作コストという大人の事情も透けて見えるものの、悠人(横山裕)をはじめとする舞や久留美たちが帰ってこられる場所、または五島からやってきた人々を歓迎する憩いの場としてそこにあり続けていたようにも思う。 ■『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期) 物語において、喫茶店が特に重要な場所として描かれているのが『カムカムエヴリバディ』だろう。三世代のヒロインが、昭和から平成、そして令和までの100年のファミリーストーリーを紡いでいく『カムカム』。その初代ヒロイン・安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)が初デートに訪れるのが、ジャズ喫茶「ディッパーマウスブルース」である。 マスターの定一(世良公則)がかけるレコードが、ルイ・アームストロングの「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」で、「ひなたの道を」というタイトルはドラマ全体を貫く大切なメッセージとなっている。二代目ヒロイン・るい(深津絵里)、三代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)の名前はその象徴だ。後にひなたがパーソナリティを務めることとなるラジオ英会話番組「サニーサイドイングリッシュ」、さらにドラマの最終盤でるいがアニー・ヒラカワ(森山良子)こと安子と再会を果たすステージで歌っていたのが「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」である。 戦争の影響から定一は「ディッパーマウスブルース」を閉めざるを得なくなるが、時代は移り、その息子・健一(世良公則)が再び岡山に「ディッパーマウスブルース」を開店。最終回では、店を引き継いだるいと錠一郎(オダギリジョー)の幸せな晩年の姿が映し出されていた。 ■『虎に翼』(2024年度前期) 『虎に翼』ではそもそも寅子(伊藤沙莉)たちの憩いの場として甘味処「竹もと」が喫茶店に近いポジションとして存在しており、店名の元となっているよね(土居志央梨)が住み込みで働いていたカフェー「燈台」が先にあることも相まって、「ライトハウス」がここまで先述してきたような出会いと別れを担う場所にこれからなっていくのは新潟という立地もあり少々考えづらい。ただ、すでに寅子と涼子、玉の再会の場所になっており、日曜日に玉が生徒たちに英語の授業を開いている様子からは新潟の憩いの場として機能しているようにも思える。行きつけのお店となっている航一(岡田将生)にとっては少なくともお気に入りの場所だ。そして、これからの展開を考えると、寅子にとっても「ライトハウス」は航一から初めて食事に誘われたお店として思い出に刻まれていくのだろう。
渡辺彰浩