肥満治療を公的保険適用対象に、バイデン政権がトランプ氏に置き土産
(ブルームバーグ): バイデン米政権は減量効果のある医薬品の適用を公的医療保険制度に義務付けるルールを提案した。肥満症を患う数百万人がこうした医薬品を入手できるようになる一方、トランプ次期政権には巨額の医療コストが発生しかねない。
メディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)は現在、ノボ・ノルディスクの「オゼンピック」やイーライリリーの「マンジャロ」といった薬品について、糖尿病などの患者への適用を認めている。バイデン政権が提案している新ルールは肥満症治療としての適用範囲をメディケアで推定340万人、メディケイド(低所得者向け医療保険)で推定400万人の加入者に広げると、ホワイトハウスは明らかにした。
計画が実行されれば月間1000ドル(約15万4000円)もかかる薬代のうち、自己負担分が最大95%減額されるとホワイトハウスの高官は述べた。これによって生じるコストは、糖尿病や心臓疾患といった症状減少によるコスト減に相殺されるという考え方だという。
このルール案が正式に成立するには数カ月かかり、発効するにはトランプ氏の了承が必要になる。ブルームバーグインテリジェンスのシニアアナリスト、デュエイン・ライト氏によれば、4月までの最終決定は望めない。
約5200万人の加入者を抱えるメディケアでは現在、肥満治療薬としての「ウゴービ」や「ゼップバウンド」は適用されない。大ヒット商品となったこれらの薬品をカバーする州のメディケイドもあるが、13州にすぎない。
肥満症治療の保険適用によりメディケアのコストは10年間で250億ドル、連邦メディケイドの費用は110億ドル、州のコストは40億ドル増加するとセンターズ・フォー・メディケア・アンド・メディケイド・サービシズは試算している。トランプ氏は政府歳出の縮小を次期政権の主要アジェンダに掲げている。
2年にわたる品薄状態をようやく脱却したノボやリリーにとって、勝利がもたらされる見通しとなった。肥満治療の市場は急成長しており、2030年までに1300億ドル規模に達すると予想されている。両社とも保険適用についてコスト面での妥当性を政府にアピールしてきた。