ヤクルト村上の見逃し三振の球「ストライクだと打者はお手上げ」 「投高打低」は審判ジャッジが一因?
現場の首脳陣、選手は得点が入らなくなっている事態をどう感じているだろうか。 セ・リーグ球団の打撃コーチはこう指摘する。 「本塁打が出なくなったなあ、と感じたのはコロナ禍の20年あたりですかね。色々な要因があると思いますが、150キロ以上を投げる投手が各球団でゴロゴロ出るようになったことは大きいと思います。打者は打撃練習で打ち込めるので投手より技術向上の点で優位に思われますが、動体視力の問題なのか、球速が150キロを超えると一流の打者でもコンタクト能力が格段に落ちる。打者の目が慣れて剛速球に対応できるようになり、本塁打を量産する時代が来るんでしょうけど、少し時間が掛かるように感じますね」 ■審判が見えていないな 在京球団で主軸を張る打者は、 「150キロを超える直球に加え、手元でカットしたり、シュートしたりする球を投げる投手が増えている。捉えたと思っても芯を外されるので、長打を打つ難易度は数年前より格段に上がっていると思います」 と語り、迷いながら続けた。 「あとは……審判が(球を)見えていないなと感じる時が多いです。打者が自信を持って明らかなボール球と判断したのに、ストライクと判定される時が少なくない。自信を持って判定しているんでしょうけど、投手の球速が上がり、一部の審判は動体視力が追いついていないように感じます」 パ・リーグの中距離砲打者も「審判批判ではないですよ」と前置きした上で、ストライクゾーンについて言及した。 「審判によって、ストライクゾーンが広すぎると感じることがすごく多いです。投手もその基準を利用して投げ込んでくる。打者はボールと判断した球に手を出すと打撃を崩すし、対応が難しい。あとストライクゾーンが試合中にコロコロ変わるような…。球が速くなり、変化球の精度が上がっているので審判が見極めるのが難しくなっているのかもしれません」
5月21日のヤクルト―DeNA戦(神宮)では、ヤクルトの村上が判定に不満をあらわにしたことが話題に。4点差を追いかける4回にフルカウントからのカットボールを見逃したが、ストライクの判定で見逃し三振に。一塁ベンチに引き揚げる際に白井球審に厳しい表情でつぶやいた。6月16日のヤクルト―オリックス戦(京セラドーム)でも村上は4回に自信を持って外角の直球を見逃したが、白井球審の判定はストライク。見逃し三振にバッターボックスで語気を荒げていた。 他球団のスコアラーは、 「白井球審がどうこうではなく、打者から見ると厳しい判定に感じますよね。オリックス戦の見逃し三振に倒れた球をストライクと取られると、打者はお手上げです」 と指摘する。 ■1球の判定で野球人生が変わる 審判は精密機械ではない。ストライクゾーンの球をボールと判定し、逆のケースもあるだろう。個々の審判によってもストライクゾーンの傾向が違う。その特徴をつかむのもプロの技術かもしれない。 前出したパリーグの中距離打者は、 「審判の方に尊敬の念を持っています。ただ、1球の判定で野球人生が変わってしまう。ストライクとボールはリプレー検証を要求できないですし、個人的には球審だけ機械を導入しても良いかなと。そうすれば判定に対してわだかまりがなくなる」 と提案する。 米国では一足早く、「ロボット審判」が導入されている。球場に設置された弾道測定器がストライクゾーンを通過したかどうかを測定し、判定する。事前に各打者の身長などが入力され、ストライクゾーンは公平性を期している。今季からは米大リーグ傘下3Aでも運用されている。