バレエに誠実で深く考え、理想のダンサー像をひたむきに目指す【王子様の推しドコロ】|JJ
うまくなるために考え続け、伝わるバレエを目指します
帰国後、東京バレエ団に入団。「ハンガリー国立バレエ学校に在籍していたときに、偶然、東京バレエ団が海外ツアーをしていて、エキストラとして出演させていただいたんです。僕はアピールが得意ではないので海外のバレエ団でやっていけるか不安もあり、東京バレエ団のアットホームな雰囲気に惹かれて、帰国してから正式に入団しました」。 生方さんの魅力は精確性のあるピルエットなどテクニカルな面と、透明感がありフレッシュな踊りが両立しているところ。ひとくくりでは語れないその多面的な存在感と踊りは舞台でも格段に目を引きます。「個人的にはドラマティックなバレエが好きなんです、たとえば『ロミオとジュリエット』のような。日々悩み続けている性格なので、バレエ演目に多い悩める王子役には憑依しやすいのですが(笑)、実は『ロミオとジュリエット』ならマキューシオ、『ドン・キホーテ』のバジル、『海賊』のアリなど、ポジティブで陽気なキャラを踊る機会が多いです。憧れるダンサーもテクニカル面が特に秀でたダニエル・シムキンさん、レオニード・サラファーノフさん、恐れ多いですがミハイル・バルシニコフさんです」。 ご自身でおっしゃるとおり、積極的ではないけれど深く物事を考えながら今できることを誠実に一所懸命こなし、道を切り拓きチャンスは確実にものにしていくタイプ。「うまくなるためにはどうしたらいいか、常に疑問をもって考えているんです。役作りに関しては偉大な先輩がたくさんいるので、質問をしてアドバイスをもらい、他のダンサーのビデオを見ては同じような踊り方を試し……を繰り返し、自分らしさを模索しています。演劇性のあるバレエが好きなので、テクニカルな面はもちろんですが、お客様が舞台に没頭できるような演技力も持ち合わせたダンサーになりたいと思っています。そうすることで自分の存在も肯定できるはずだから。斎藤監督からは『バレエの美しい形ばかりに気をとられすぎていると伝わってこない。感情がのる形に体を持っていってほしい』と言われて、美しいけれど“伝わるバレエ”が今の課題です」。
『小さな死』 © Shoko Matsuhashi 取材・文/味澤彩子