飛ばないボール、外に広すぎるストライクゾーン......「3割打者が両リーグで3人」「防御率1点台以下が両リーグで7人」の異常事態! "ガラパゴス化"が引き起こすプロ野球「超投高打低」問題
もはや3割打者は絶滅危惧種なのか――。史上まれに見る「超投高打低」の要因とは? 野球評論家、お股ニキ氏がさまざまな観点から分析する。 【写真】打率3割超えの選手ほか ※記録はすべて交流戦終了時点のものです。 * * * ■3割打者の共通点は〝横振り〟 リーグ戦が再開したプロ野球。交流戦を経て、改めて際立つのは今季の「投高打低」ぶりだ。交流戦終了時で打率3割超えは、近藤健介(ソフトバンク)、田宮裕涼(日本ハム)、ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト)の3人だけ。シーズン半ばとはいえ、歴代最少だった昨季の5人を下回っている。 一方、防御率1点台以下の投手は両リーグ合わせて7人もいる。この異常事態をどう見ればいいのか? 「極端な投高打低は何かひとつだけの問題ではありません。飛ばないボール、投手のレベルアップ、外に広すぎるストライクゾーンなど、さまざまな問題が絡み合っています」 こう語るのは本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏。その複合的な要因を個々に深掘りしていこう。まずは多方面で叫ばれている飛ばないボール問題について。 「私の感覚では2021年からボールが飛ばなくなってきた。その状況が数年続き、今季は開幕前からその傾向がより顕著で深刻に。村上宗隆(ヤクルト)が『打球速度と飛距離が比例していない』とコメントするなど、現場から声が上がるほど変化は明確です。 一方、中日の立浪和義監督は飛ばないボールを逆手に取り、守備的な戦略で開幕ダッシュにつなげました」 ボールが飛ばなければ飛距離が伸びず、本塁打が減るのは当然だが、3割打者も減っているのはなぜか? 「例えば、以前なら観客席まで飛んでいたファウルボールがスタンドに入らず、野手がファウルゾーンで捕球できてしまう。 さらに、外野の頭を越える打球が少なくなれば、外野はどんどん前進守備になってヒットゾーンも狭くなる。打球速度も遅くなるため、野手が打球に追いつく場面も増える。球界全体で打率が下がるのも当然です」 では、近藤、田宮、サンタナの打率3割トリオの共通点はなんなのか? 「近年、長打やホームラン増を目指した〝縦振り〟に注目が集まっていますが、打率を残せる選手はほとんどがバットを横に寝かせ気味にしてから打つ〝横振り〟です。 近藤、田宮、サンタナ以外でも、細川成也(中日)や丸佳浩(巨人)ら、好調な選手は同じタイプ。村上が三冠王を獲得したシーズンは今よりも横振りでしたし、今季の大谷翔平(ドジャース)が打率を残せているのも、昨季より横振りだからです」 「日本の投手の傾向的にも横振りのほうが適している」とお股ニキ氏は語る。 「日本人投手はストレートの縦変化、いわゆるホップ成分が多く、その縦変化に縦振りで合わせるのは至難の業です。『フライボール革命』という言葉に惑わされがちですが、大事なのはライナーを打つこと。 楽天打線が交流戦で好調だった要因のひとつも、小郷裕哉、鈴木大地、辰己涼介らが最短距離でボールを叩くように打つスタイルを徹底できたからだと思います」