会話で大事なのは「テンポ」…相手との距離を深められる人とそうでない人の決定的な差
「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる #2
「この人、話しやすいなぁ」あるいは逆に「この人、話しにくいなぁ」と思うことはないだろうか。これには会話のテンポが左右していることがある。 話のテンポが重要な職業といえば! 明治大学教授の齋藤孝さんが40年にわたって続けてきたコミュニケーション講義のエッセンスを紹介した『「考えすぎて言葉が出ない」がなくなる』より一部抜粋、再構成してお届けする。
状況に応じてテンポを使い分けよう
相手との関係を深めるには、相手のテンポに合わせてあげることも大事です。 ただし、まだそこまで仲がよい相手ではない場合、今の時代は、少しテンションを上げた状態のほうが、コミュニケーションをとりやすいような空気があります。 ユーチューブを観ると、それがよくわかります。ユーチューバーは、テンポよく話すことで、視聴する側を引きつけようとしています。 私もユーチューブをよく観るのですが、彼らの速い口調に影響されてか、どんどんせっかちになって、再生速度を1.25倍、1.5倍、1.75倍と上げて視聴するようになりました。今はついに、2倍で視聴するようになっています。 テレビの生放送でも、3秒の間(ま)が空くと「どうした、このスタジオは!」という状態になります。2秒でも違和感がありますし、私は1秒でも遅い感じがすることがあります。出演している側も瞬時に言葉を選ばなければならず大変です。 今は見ている人の情報処理の能力が高くなり、ゆったりした会話が耐えられなくなってきているのではないかという気がします。 授業でも、「内容が濃い」「勉強になる」というコンテンツより、「先生の話すテンポがよい」ことが、授業のうまさにつながっています。 話すテンポだけでなく、テキパキとした展開も学生には好評です。 「じゃあ次、ストップウォッチで計るから、一人15秒ね」「考える時間は30秒ね」「じゃあ次行きます、はい」と、どんどんテンポよく展開して、学生を飽きさせないようにする。そうでないと、授業を聴いてくれません。私は教えることのプロとして、100分なら100分の間中、学生が片時も気を抜けないようにします。 すると、彼らはどう感じるか。「疲れた」というよりも「あっという間だった」という感想を言ってきます。テンポがいいと、たとえ100分でも「こんなに短く感じたのは初めてだ」と感じさせることができるのです。