ここ4試合で1勝1分2敗。首位の町田ゼルビアは攻略されたのか? 福西崇史の見解は?
そのなかでも町田がわずかに抜けて首位にいるのは、明確なスタイルがあるので結果が出ないときでも迷うことなく、割り切ったサッカーができる。それを黒田剛監督が我慢強く続けられるようマネジメントできていることが大きいと思います。 黒田監督は失敗してもいいから今季はこのスタイルを貫いて、それで結果が出たら良しだし、結果が出なかったら次に向けた改善ができる。なによりブレることが一番良くないと言います。それがうまくいって今は結果が出ていますが、結果が出なくなったらスタイルを維持しつつ、改善策を考える。シンプルですが、このブレないマネジメントは多少結果が出ないときでも迷走しない大きなポイントだと思います。 また、他のチームと比べて、誰か一人のタレントに強く依存していないことも挙げられます。例えばオ・セフンは確かに強力だけれど、彼がいないときはミッチェル・デュークがいます。誰が出ても町田のスタイルに沿って振れ幅が小さくチームとしてのパフォーマンスを発揮できるので、大きく崩れることがない。 それから、チームのスタイルに合った選手を確実に補強できていること。この夏の補強でもブリストル・シティに移籍した平河悠に代わって日本代表の相馬勇紀を加え、そのほかにも杉岡大暉、中山雄太、白崎凌兵と、実力と経験があってスタイルにも合う選手を次々と獲得しました。フィールドプレイヤーが4人も変わる、しかもその多くが代表クラスとなれば前半戦とはまた違うチームになるので、対策が進んだとしても前半戦の対策でははまらない可能性もあります。 そもそも今季はクラブとしてはJ1初挑戦ではありますが、シーズン前の補強で昌子源、谷晃生、仙頭啓矢、柴戸海らJ1での経験と実力を持った選手を数多く補強し、J1で勝てるチームを整えてきました。プレミアリーグのマンチェスター・シティやニューカッスルのように、今の首位という順位は、投資に見合ったある意味当然の結果だと思っています。 Jリーグにこれだけ大胆に大金を投じ、それをちゃんとマネジメントできる監督を招聘して現場とフロントの連携が取れた的確な補強ができるクラブはそうありません。むしろ投資に見合った結果が出せないクラブは多いです。そのなかで町田の補強の的確さは強みになっています。それを羨ましく思う現場の人は多いと思います。 それでも繰り返しになりますが、力が抜けたチームはありません。上位5チームの勝ち点差は7で直接対決も残っているので、まだどこが優勝するかはまったくわからない状態です。これからどんな展開で最終盤に向かっていくのか、楽しみながら注目してほしいと思います。 構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜