ネガティブ情報は「サンドイッチ」で伝える! 発達障害の専門家に教えてもらった上手な伝え方「パワートーク」
記事前編で見た通り、発達障害・グレーゾーンの「あの人」は、本人のためを思って苦言を呈する配偶者、会社の先輩、同僚などを、うっかり「敵」認定して壁をつくってしまうことがあります。そのような不幸な「すれ違い」を避けるには、どうすればいいでしょう。野波さんが専門家から授かった知恵を、『発達障害・グレーゾーンの あの人の行動が変わる言い方・接し方事典』より抜粋してお届けします。 【写真】『あの人の行動が変わる言い方・接し方事典』
「ダメ出し=全否定」と誤解されやすい
仕事で低い評価がつくのは、誰にでもあり得ることです。どんなに優秀なビジネスパーソンでも、常時「業績トップ」というわけにはいきません。ときには失敗することもあります。 しかし、たとえ失敗したときでも、評価されているのは「仕事の結果」であって、仕事をした「人物」の価値が下がるわけではありません。たいていの人はそう理解しているから、気を取り直してまた業務に向かえます。 ところが発達障害がある、もしくは診断はないけどそれっぽい特性がある「あの人」の場合は、そうはならないことがあります。たとえばある会社では、仕事はよくできるけど愛想が足りない「あの人」(ネコ)が上司からこんなふうに怒られてしまいました。 このネコのように不満を募らせ、すっかり「やる気」を喪失してしまう「あの人」がいます。ちょうどこんな感じになるわけです。 その一方、立ち直れないほどのショックを受ける「あの人」もいるそうです。 「不満を募らせる」「ショックを受ける」、このどちらも、言葉を文字通りの意味で受け取りがちな「あの人」の特徴が原因で起こっています。 文字通りに受け取ってしまうので、「ダメ出し=自分への全否定」と誤解し、なかにはたとえば、 「過剰に落ち込む→仕事が手につかなくなる→退職」 という経緯をたどってしまう人もいるそうですが、それは避けたいと考えた場合、どうすればいいでしょうか。
「悪いこと」を「いいこと」でサンドイッチする「パワートーク」を使う
ひとつの方法として「パワートーク」を提案します。これは視覚発達支援センターの柳下記子(やぎした・のりこ)先生から教えていただきました。 柳下先生とは以前、『発達障害がある人のための みるみる会話力がつくノート』(講談社)という本でご一緒させていただきました。そのなかでは自己紹介のテクニックとして紹介されています。そのアレンジバージョンです。 「パワートーク」とは要するに、「いいこと→悪いこと→いいこと」という順に、ネガティブ情報をポジティブ情報で挟んで伝える方法です。すなわち、 (1)まず過去のことをほめる(いいこと) ↓ (2)現在の間違いを指摘する(悪いこと) ↓ (3)改善策を提案……「こうすればもっとよくなる」(いいこと) という順番で伝えることで、話の最後を前向きに終わらせ〈全否定された〉と感じさせないようにするのです。たとえば先ほどのネコのような、ちょっと愛想が足りない「あの人」に「挨拶ができていない」ことを指摘するなら、次のように伝えるわけです。 こういう伝え方を心がけるだけで、「あの人」から敵認定される可能性を少しは減らせると思います。 次回、「【第4回】「ミスしたら罰則」は危険!……発達障害の人に「ペナルティ」を課してはいけない納得の理由へ」では、「あの人」に頼み事をするときの注意点をご紹介します。
野波 ツナ(漫画家)