【安田記念/記者の特注馬】前評判はロマンチックウォリアーに譲っても… ヴォイッジバブルが侮れない〝理由〟
[GⅠ安田記念=2024年6月2日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝1600メートル] 【トレセン発秘話】2016年の凱旋門賞から、基準を満たした海外GⅠの馬券が国内でも発売されるようになった。同一レースに複数の日本調教馬が遠征。国内での戦歴は互角、能力も拮抗しているなら…。海外初挑戦の厩舎よりも、例えば矢作厩舎のような“手慣れた”陣営が送り出した馬を上位に取った方が的中率は上がるに違いない。裏を返せば日本遠征馬の取捨を検討する際にも同じ基準は有効となるはずだ。 記者が取材した外国調教馬の中でも印象深い好走例が05年スプリンターズSのサイレントウィットネス。レース前日朝の最終調整中、中山競馬場のダートコースでつまずきコーツィー騎手を振り落として放馬。13・5→12・5秒と暴走ラップを刻んだ際は「出走取り消し」が脳裏に浮かんだが…。レースでは母国・香港と同様のパフォーマンスを発揮しデュランダルの追撃を余裕しゃくしゃくで抑え込んで先頭ゴールイン。放馬の際に「これも競馬(の一部分)」と泰然自若の構えを見せていたクルーズ調教師は同レースがJRA・GⅠ挑戦4度目での初勝利だった。 同レースも含めて香港勢のJRA・GⅠ勝利は5勝。この安田記念では00年フェアリーキングプローン、そしてクルーズ厩舎の06年ブリッシュラックが勝利を挙げている。18年ウエスタンエクスプレス(10着)以来の参戦となる今年の2頭は“経験値”の点で甲乙譲らないライバルとなる。ロマンチックウォリアーを管理するC・シャム調教師は調教助手として前記フェアリーキングプローンの来日に帯同。調教師としては12年スプリンターズS=リトルブリッジ(10着)、24年高松宮記念=ビクターザウィナー(3着)に続き3回目の挑戦となる。ヴォイッジバブルのP・イウ調教師も10年スプリンターズSをウルトラファンタジーで制するなど計3回の参戦歴がある。 「以前は東京競馬場内に国際厩舎はなく、競馬学校(千葉県白井市)で検疫を受けてから、さらに輸送がありました。直接、東京に入厩できる点は大きな違いですね。当時は自分自身で調教に騎乗しましたが、今回はスタッフと世界トップのジョッキーに任せていますし、いい仕事をしてくれています」とは28日の共同記者会見に臨んだシャム調教師。 一方、イウ調教師は木曜夜の来日予定でそれまでの調整は帯同するヤンキン・ラウ調教助手に“全権委任”の構え。「調教師は日本での経験が豊富ですし、実際に結果を出していますからね。毎日、電話で連絡を取り合って、指示を受けていますし、特に不安なく調整できています」とラウ助手も順調な仕上がりに胸を張る。 前評判は格上位(GⅠ7勝)、かつオーストラリア遠征(コックスプレート)で左回りを克服しているロマンチックウォリアーとなるが、前々走・ドバイターフの結果(13着)が嫌われるようならヴォイッジバブルも侮れない。「私はドバイに行きませんでしたが、帯同したスタッフからは『落ち着いていたし、カイ食いも良かった』と聞きましたし、長時間の輸送が敗因とは思っていません。枠順が良くなかったし、位置取りも悪く、残り100メートルで落馬のアオリも受けましたから」とラウ助手。「自分は初めてなので左回りの調教に慣れるまで時間がかかりそうですが(笑い)。馬の方は問題なく対応してくれると思います」と香港ジョーク”も交えて語った愛馬への信頼に一票を投じる価値はありそうだ。
山河 浩