廣岡達朗コラム「今の球界は一、二軍の区別がまるでない 日本は日本のスタイルでやればいい」
二軍では取り柄のある選手を育てるべき
阪神は大山悠輔、佐藤輝明がスタメンに戻ってきた。逆に森下翔太を二軍で再調整させている。 【選手データ】岡田彰布 プロフィール・通算成績 一軍のクリーンアップを平気で二軍へと落とす時代になった。われわれのころには考えられない。要は、指導者がオーダーとは何かを知らないのだ。 一、二番、六~八番が投手にしつこく食らいつき球数をほうらせて出塁、クリーンアップが当たれば長打で“掃除”する。 オーダーを組むにあたって指導者も、選手がどんなタイプかひと目で見極められないなら、やめたほうがいい。 われわれの感覚でいえば、一軍で三番に座っていた打者が二軍に落とされたら引導を渡されたのも同然だ。巨人90年の歴史を築いた大打者の一人、川上哲治さんが二軍で何番を打ってこいと言われたら間違いなくやめる。それが四番の誇りである。要は一軍とは何か、二軍とは何かの区別が今の球界にはまるでないのだ。 二軍のチームが優勝したと万歳している光景を見るが、二軍において勝敗は意味がない。この選手は一軍へ行ったらバントを必ず成功させるといった取り柄のある選手を育てるべきだ。しかし教えるコーチが二軍にいるだろうか。 私は西武の監督時代、第二グラウンドでニコニコしながら練習している選手を見て、「お前ら、商品価値がないから二軍にいるんだろう。バカタレが!」と一喝したことがあった。球団は二軍の選手に上手になって一軍の戦力になってくれという思いを込めて先行投資をしている。笑っている場合ではないのだ。 日本球界は指導者を育てる場がない。昔はOBクラブが杉下茂さん、稲尾和久といった往年の大投手を講師に招いて、いろいろな話を聞かせた。杉下さんは「フォークボールでストライクを投げたらいけない。真っすぐに比べて遅いから打たれる」と説いた。稲尾は「併殺を取るときは速いスライダーで強い打球を打たせるべきだ。遅いスライダーではボテボテのゴロになってしまう」。時代を築いた先人の話にはなるほどと思うヒントが隠されている。現在OB会会長を務める八木沢荘六は、こうした勉強会をどんどんやるべきだ。 メジャー・リーグのマネをする必要はない。日本は日本のスタイルでやればいい。NPBではタイブレークの導入が検討されたが、あんなものは放っておけばいいのだ。