「ワイドショー 現場取材主義の終焉」リポーターを辞めた大村正樹が語る
紙媒体がワイドショーを責めるのは、強烈なメッセージ
―これからのワイドショーに期待することはなんですか。 大村さん: 思いがありすぎて、難しいですね。なかなか一言ではあらわせません。番組パッケージや演出うんぬんよりも、やはり「人」が大事。働いている大勢のスタッフ、それぞれの思い。こぎれいな情報だけではなくて、人間的な、どちらかというと下世話な話題を取り上げるのがワイドショーなので、世間やあるいは局内でも“鼻つまみ”扱いされがちです。しかし、みんなが集まって、いいものを出そう、それを伝えようという思いは、ものすごく強い。だからもっと“生”の情報にこだわってほしいと願っています。かたや、テレビの発言が“こたつ記事”としてネットにあがり拡散される時代ですから、誰かが現場に行って報じることが少なくなっているような気がします。やはり面白いのは、現場の空気を肌で感じること。そこにニュースがあると思いますし、そこは昔から変わらない。スクープを出す新聞や週刊誌は常にそれが原点ですよね。 たとえば、紙媒体がワイドショーを責めるのも、ぼくらに対する強烈なメッセージだと思います。しかしこれまでワイドショーは、世界的に認められる独自映像や事件当事者の独占インタビューなど、ほかのメディアに負けないくらい数々のスクープを報じてきた歴史があります。当然、局も番組も独自取材にはこだわっていて、やろうという気持ちはある。しかしさっきお伝えしたように、なかなかそれができない状況も一方ではあります。これはもしかすると、大手メディア全体が抱えている悩みなのかもしれません。けれども、よしんばコンプライアンスを理由に身動きが取れないと感じたとしても、「取材がいちばん大切」ということに変わりはありません。特に若い人には、萎縮しないで、テレビとして、紙に負けないことをやろうぜ、と言いたいです。そして、テレビやるじゃん、ということができたら最高ですよね。気概がある人が「ここへ行かせてください」とプロデューサーとかけ合って、また、元気な、躍動感のあるVTRの時代が来る。ぼくは、それを期待しています。