フェラーリF1、来季から“レッドブル型”サスペンションを投入? ハミルトン加入に合わせてコンセプト変更か
現行“グラウンドエフェクト”規則がF1に導入されてから今年で3年目を迎える中、フェラーリはアップデートを通したパフォーマンスの改善幅が少なくなっていると認めた。そんな中、チームは来季にもサスペンション形式の変更を行なう可能性があるようだ。 【ギャラリー】フェラーリ、フィオラノ・インシーズンテスト フェラーリは今年、SF-24ですでに大きな進歩を遂げ、開幕から8戦までに2勝をマーク。レッドブル、マクラーレンとの三つ巴の争いを展開している。 しかしマシン開発が限界に近づくにつれ、ライバルと差をつけるようなパフォーマンスを見つけ出すことがますます難しくなっている。 エミリア・ロマーニャGPでフェラーリが投入した大型アップデートは一定の成果を収めた。そして次なる空力パッケージを、当初のハンガリーGPから一戦予定を早めてイギリスGPに持ち込むこととなっている。 さらにモナコGPで使用されたハイダウンフォース仕様のリヤウイングに続いて、フェラーリは2種類のリヤウイングを投入予定。カナダGPでは低ドラッグ仕様、スペインGPからは中速サーキットに最適な仕様が登場するようだ。 しかしフェラーリのフレデリック・バスール代表は、こうしたアップデートにもかかわず改善の実現が難しくなっていることを認めた。 「予算制限と現在のレギュレーションでは、両方をマネジメントする必要がある。投入できるものがあれば、アップデートを持ち込むつもりだ」とバスール代表は言う。 「心に留めておかなければならないのは、パフォーマンスの収束のようなモノがあり、開発率は2年前よりはるかに低くなっているということだ。つまり、我々にとってもそうだが、誰にとっても、アップデートを持ち込んでも2年前よりも改善幅は小さくなっているということだ。それは普通のことだ」 そういった収穫逓減や2025年マシンに対応すべく、フェラーリが数ヵ月前に予想されていたよりもアグレッシブな変更を行なうかもしれないという話もある。 バスール代表は、マラネロのファクトリーでは現在3つのプロジェクトが進行中だと説明した。 「チームの一部は今シーズン中に見られるであろう、次のアップデートに取り組んでいて、さらにもう一方は既に来年のマシンに集中している」とバスール代表は言う。 「我々は既に2025年マシンにゴーサインを出している。さらに2026年型パワーユニットについても、少し前から作業が始まった。(次世代F1マシンの)シャシーとエアロダイナミクスに関して、いくつかコンセプトの仮説は立てられているが、まだレギュレーションがない以上、それ以上のモノはない」 2025年マシンに関する憶測でフェラーリは、2026年のレギュレーション改定に向けてリソースを節約すべくSF-24をそのまま進化させるのではなく、大きな変更を加えようとしていると言われている。 情報筋によると、フェラーリのデザイナーは2025年マシンに効果をもたらすいくつかの要点を理解しており、それがレッドブルやマクラーレンとの激しい戦いに大きな違いをもたらす可能性があるという。 興味深いのは、長年独自の道を歩んできたフェラーリが、フロントサスペンションを直近2年のF1を支配しているレッドブルをはじめとして、他ライバルチームも採用しているプルロッド式に変更するかもしれないということだ。いずれにせよ、2026年には切り替えが行なわれる可能性が高いことを考えると、この面で先手を打つという考えもある。 プルロッド式フロントサスペンションはマシンのフロント回りの気流を改善し、フロア下のベンチュリトンネルに空力的なアドバンテージをもたらすデザインであるのは明確で、レッドブルとマクラーレンは既にこの方式を採用している。 プッシュロッド式からプルロッド式に変更する場合、サスペンションアーム取り付け位置の変更や内部構造の移動が必要となるため、シャシーを一新する必要がある。 サスペンションの方式を変更する決断が下されれば、ドライバーの乗車ポジションも変更される可能性があり、それによって車両の重量配分が改善されるかもしれない。 フェラーリがレッドブルスタイルのフロントサスペンションを採用する可能性が浮上したのは、レッドブルからの退団が決まった伝説的なレーシングカーデザイナーであるエイドリアン・ニューウェイを2026年マシン開発に向けて引き入れようとしているためだ。 今年フェラーリはリヤサスペンションにプルロッド式を採用しており、それはフェラーリからパーツ譲渡を受けるカスタマーチームのハースも同様だ。 その他のチームはプッシュロッド式を使用しているが、フェラーリはそれに倣うことで得られるモノは大きくないと確信している。 今年はじめ、フェラーリのテクニカルディレクターであるエンリコ・カルディレは、他チームを真似しない理由について次のように説明した。 「実際のところ、我々のリヤサスペンションはトップとロワーのウィッシュボーン配分がレッドブルと少し違う」 「我々はこの方向性で良好な空力的な結果を得た。プルロッドからプッシュロッドへ移行するとなると、重量やそれに伴うモノという点で、多少の妥協を受け入れるほど大きなアドバンテージは得られなかった。そこで同じレイアウトを維持したまま、サスペンションを進化させた」
Jonathan Noble, Franco Nugnes