「袴田事件」ってどんな事件? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
どういう位置づけの事件なのか
これまで述べてきた通り袴田事件には「自白の任意性」「刑事裁判の鉄則」「科学捜査の進展」「開かれた司法」といった過去から今日に渡る刑事事件および裁判の要素が多々詰まっています。加うるに「死刑制度」を考え直す重要な役割もあります。再審請求の間、死刑囚とて執行されないのが原則ですが絶対ではありません。確定判決が出るまで考えもしなかった科学の進展や法運営のあり方の変化が訪れる可能性は今後も十分あり得ます。 死刑という罰は後になって間違いとわかっても取り返しがつきません。むろん有期刑や無期懲役でも冤罪は多大な犠牲を加害者とされた者が払うものの、生きてさえいればギリギリ許される余地も出てくるでしょう。それでも死刑制度は維持か、維持するとしても今のままでいいのかと袴田事件第2次再審請求は世に問うたといえます。 ※この記事は3月27日配信分をアップデートして再掲しています。 --------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】