ワイヤロープ製造から転換、泉州野菜の魅力発信
NSW「いずみピクルス」
食や農業に関わる事業を展開する「NSW」の「いずみピクルス」は、大阪・泉州地域の野菜や果実を使って、日本人の口に合う軽やかな風味に仕上げ、素材が持つ本来のおいしさを引き出した商品だ。彩りの良さも武器に、百貨店などで人気を集めており、地域の魅力発信にも一役買っている。(山村英隆) 【画像】色とりどりのピクルスなどを紹介する西出さん(右)と花岡さん(大阪府泉佐野市で)=山村英隆撮影
会社存亡の危機
「廃業か、事業転換か」。2011年頃、現社長の西出喜代彦(45)は、窮地に追い込まれていた。 大学院を出た後、約3年間のIT企業勤務を経た後に戻った家業のワイヤロープ製造会社は、取引先から打診されたグループ会社化を断ったのを機に、経営が急激に悪化。さらに、頼みの綱だった当時社長の父も病気を患っており、会社の存亡は自身の双肩に委ねられていた。
打開策を探る中で頭をよぎったのが、泉州の地場の農産物を使った新規事業への参入だった。食や農業に関心があった父と共に植物工場の運営を検討したことがあり、何より久々に故郷で口にした農産物の味に魅力を感じていた。 地域の特産品として知られる水なすの活用法を模索し始めると、構想は着々と固まっていった。「ぬか漬けは贈答品などでは定番だが、苦手な人もいる。ピクルスなら、そうした人たちにも手軽に水なすのおいしさを届けられるはずだ」。水なすなら、地域の活性化に関する大阪府の補助金の対象になるという算段もあった。
第2の創業
「これなら戦える」。覚悟を決めると、事業化に向けて本格的に動き出した。 国内外の様々なピクルスを食べては、梅酢や黒糖といった新しい味にも挑戦しつつ、試作を繰り返した。野菜や果物本来のおいしさが引き立つ昆布だしを使った和風ピクルスと、レモンを使った洋風ピクルスの2種類の商品化にこぎ着けたのは12年だ。家業にとって「第二の創業」となった瞬間だった。 地元の産直市場でテスト販売をしてみると、評判は上々だった。さらに、東京で開かれた物産展に出品したところ、百貨店のバイヤーから「カタログギフトに載せてみませんか」と声をかけられ、事業は一気に軌道に乗り始めた。14年に大阪府泉佐野市のふるさと納税の返礼品に選ばれたこともあり、販売は順調に拡大していった。 その後も、新商品を次々と生み出している。みずみずしい果実を漬け込んだ商品のほか、赤と黄色が鮮やかなパプリカを使った商品など、現在のラインアップは数十種類に上る。