DXは企業価値向上につながっているかという視点に

　前述のように、「デジタルガバナンス・コード」は、企業にデジタルによるビジネス変革を実現するためのビジョン・戦略・体制などが整っていることを認定する「DX認定制度」の基準となっています。 　一方、今回の「デジタルガバナンス・コード」の見直しの背景には、「DX認定制度」においてテクノロジー導入に偏った認定が増えていることがあると考えられます。 　2018年に経済産業省が発表した「DXレポート～ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開～」には、「DXを実行するに当たっては、新たなデジタル技術を活用して、どのようにビジネスを変革していくかの経営戦略そのものが不可欠である」ことがうたわれており、この原点に回帰するような狙いがあると思われます。 　一方、DXによって企業価値が向上したことを具体的に訴求する際にそのKPI設定や成果・評価、説明をどのように行うのかといった点には課題があると考えられます。 　「デジタルガバナンス・コード3.0」は、各々の企業の経営層が、データの取得・分析・活用、データ連携についての説明と効果を自らの言葉で説明できるようになり、意識改革・キャリア形成支援などの意識を持つとともに、自らのデジタル・ケイパビリティの必要性を認識し、自らのデジタル・ケイパビリティを高める努力をし、セキュリティ対策の必要性を認識するといった動きが進むことを求めていると考えられます。 　また、「DX認定」、「DX銘柄」、「DXセレクション」などの認定・評価・選定などにおいてもこれらの経営層の取り組みレベルが評価される形に変わっていくと思われます。 　そのためには、経営ビジョンとDX戦略が連動しているかといったことや、現実とのギャップの定量把握・見直し、企業文化への定着などが必要となると考えられます。 　こういった動きによって、「DX認定」、「DX銘柄」、「DXセレクション」などの認定・評価・選定などを目的化せず、経営層自らが変革のエンジンとなり、本来のDXの取り組みが進む企業が増えることを期待したいと思います。