銀行が自己資本を抑える最新手法、次の金融危機の火種にも-社説
SRTには銀行のエクスポージャーの再調整など、正当な用途がある。しかし、それには独自のリスクが伴う。株主資本とは異なり、あらゆる損失を吸収するわけではない。
指定された資産のみに適用され、カウンターパーティーが支払えない場合、危機に際して価値がゼロになる可能性がある。08年には、保険会社アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)でそうした事態が起こりそうになり、米史上最大級の救済措置が必要となった。
今はさらに悪いことに、ひねりが加わっている。ブルームバーグ・ニュースが報じたように、銀行は保険を提供しているのと同じノンバンク金融機関に融資している。
つまり、全体として見ると、リスクの一部はまったく銀行システムから離れていないということだ。このような「循環取引」の規模を把握するのは難しいが、ノンバンクに対する銀行の信用供与はここ数年急増している。米国では、22年に1兆8000億ドル(約275兆円)を超えた。
規制当局が警鐘を鳴らすだろうとの考えもあるかもしれない。しかし、欧州中央銀行(ECB)は、銀行が取引相手に対するエクスポージャーを十分に理解していないという自らの調査結果があるにもかかわらず、合成リスク移転の促進に取り組んでいる。
欧州は投資を促すために証券化をさらに進める必要があるが、それは価値不明の不透明な契約ではなく、透明性のある資産売却を伴うべきだ。
国際通貨基金(IMF)が強く求めているように、少なくとも規制当局は大部分がプライベート取引である証券化商品とその潜在的なシステミックリスクを評価するために必要なディスクロージャー(情報開示)を義務付けるべきだ。
そして、究極的には、劣悪な代用品で妥協するのではなく資本増強を銀行に求める必要がある。本物に勝るものはない。
原題:Banks’ New Trick Could Mean Trouble for Everyone: Editorial(抜粋)
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