移住先の唐津で2000人のヨガフェス インストラクターの原動力は“涙あふれた”実体験
古代インド発祥とされる心身の修行法「ヨガ」に関する2000人規模のイベントが23日、佐賀県唐津市北城内の舞鶴荘をメイン会場に開かれる。実行委員長は、夫の転勤で約20年前に鹿児島から移り住んだインストラクターの上妻（こうづま）智子さん（45）。知り合いもいない状態から少しずつヨガ仲間を増やし、地域が一体となった大規模イベントへと成長させた。ヨガを通して自身の内面と向き合った実体験が、多くの人を巻き込む原動力になっている。 【写真】唐津市の海岸で夕日を浴びながら行われた「サンセットビーチヨガ」 上妻さんはホッケー競技が盛んな鹿児島県薩摩川内市の出身。幼い頃から選手として活躍し、高校時代は国体にも出場。天理大学時代にはオリンピック日本代表を目指したものの、壁の厚さを実感し、断念した経験がある。 卒業後は地元のスポーツクラブに就職。ダンスのインストラクターとして人に教える楽しさを見いだしていたところ、当時広まりつつあったヨガも教えるように指示された。激しい動きに慣れていた上妻さん。「ヨガのゆっくりとした動作は性に合わないと思っていた」と振り返る。 気乗りしないままインストラクターの養成講座へ。実際に体験してみると、イメージが一変した。 呼吸を整え、体勢を変えながら瞑想（めいそう）していると、心の中にあった重荷がすーっと軽くなるように感じた。緊張がほぐれ、最後に「シャバーサナ」と呼ばれるポーズでリラックスしていると、涙があふれて止まらなくなった。 厳しい勝負の世界で味わった悔しさ。重圧からの解放感。「心の奥にあった感情が一気に噴き出してきた感覚」。心と体をつなぐヨガの神髄に触れた瞬間だった。それから程なくして夫の転勤が決まり、活動の拠点は唐津に移った。 ∞ ∞ 生まれ育った鹿児島を離れ、ゼロからのスタート。サウナで偶然知り合った地元の中年女性を頼りに、手探りのまま西唐津公民館（唐津市二タ子）で講座を開いた。集まったのは女性と同年代の友人たち。和気あいあいとヨガを楽しんだ。 口コミで別の公民館からも声がかかり、1年もたたないうちに300人規模に。唐津市内で自分のスタジオを開いた2012年からは加速度的に仲間が増え、今ではスタッフ15人、会員600人を抱える大所帯になった。「苦しい経験がある人ほどヨガの魅力を実感できる。さまざまな背景を持った仲間がどんどん広がっていきました」 この間に子ども2人を出産。5年前に夫の鹿児島転勤が決まった時は、小学校高学年だった子どもたちを夫や地元の両親に託し、1人で唐津に残る決断をした。一緒にヨガをして育ち、奮闘する母の姿を見てきた子どもたちは「お母さんの仕事を誇りに思う」と応援してくれているという。 ∞ ∞ 23日に開く「唐津ヨガフェス」には、賛同する地元の飲食店やNPO法人などが協力。メイン会場となる舞鶴荘で、子どもも参加できるワークショップや軽食などのブースを出展する。メインステージでは、ダンスや太鼓演奏のほか、自由参加の「みんなでヨガ」を計画している。 白砂青松で知られる西の浜にも会場を設け、サップボードを使って波風も楽しめる「サップヨガ」や、砂浜で夕日を浴びながらの「サンセットビーチヨガ」も予定。市内外から2000人を超える来場を見込んでおり「唐津から全国、世界へと元気を届けたい」と意気込んでいる。 （向井大豪）
