50代後半の会社員が直面する「定年後をどう生きるのか」という難問
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。 【写真】意外と知らない、日本経済「10の大変化」とは… 10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
収入がいつ下がるのか?
多くの人が知るように、定年後には収入が大きく下がる。 だが、定年前から収入低下のタイミングが訪れる人もいる。 収入がいつ下がるのか、見ていこう。 〈収入低下の第一のタイミングは50代後半に訪れる。 これは、定年を前にした役職の引き下げによるものだと考えられる。一定数の企業は役職定年制度を定めており、それと同時に給与も下げる傾向がある。 役職定年制度の実態は、人事院が公務員の給与を算定する際に活用している調査である「民間企業の勤務条件制度等調査」からつかむことができる。 2017年時点において、企業全体の16.4%、従業員規模500人以上に絞れば30.7%の企業が役職定年制度を導入している。〉(『ほんとうの定年後』より) 50代の方々は、役職定年を気にしながら働く人もいることだろう。
もう一度年収が下がるとき
役職定年で下がった収入は、その後もう一度下がる。 〈第二の給与削減の波は、定年直後に訪れる。 これは想像の通り、定年を迎えた段階で会社を退職したり、同じ会社で再雇用に移行したりすることで給与が減少するからである。 60歳から64歳の平均給与所得は55歳から59歳の8割程度である。 これは、女性配偶者などもともとパートで働いている人なども含まれた数値となるため、50代で正社員で高収入を得ていた人などは低下幅はより大きくなると予想される。 正社員で勤め続けていた人に限定すれば、同じ勤務体系でも定年直後は定年前と比較して3割程度給与が下がるというのが実情のようである。〉(『ほんとうの定年後』より)
50代から始まる「定年後」問題
「定年後」の問題は、50代から始まる。 『ほんとうの定年後』では、〈キャリアの中で人は仕事に対する意義を見失うタイミングがあり、多くの人は50代でその転機を経験する〉と書かれている。 「他者への貢献」「生活との調和」「仕事からの体験」「能力の発揮」「体を動かすこと」「高い収入や栄誉」といった、日本人が働く上で感じる価値観を分析してみると見えてくることがあるという。 〈歳を経るにつれ、仕事を通じて感じる価値は減じていく。30代になると多くの因子が急激に下がり、仕事に対して緩やかに価値を感じなくなっていくのである。 人数自体は減少していくが、会社で地位を上げ収入を高めることに希望を見出す人は、30代や40代の時点でもなお一定数存在している。ただし、それ以外の要素はだんだんと重要だと感じなくなってくる。「生活との調和」は引き続き重要な価値となっているが、これは家庭を持って子供ができ、仕事を通じて家族の生活を豊かにすることを求める人が増えるということだろう。 多くの人が仕事に対する希望に満ち溢れていた20代から、人は徐々に仕事に対して積極的に意義を見出さなくなっていく。そして、落ち込みの谷が最も深いのが50代前半である。この年齢になるとこれまで価値の源泉であった「高い収入や栄誉」の因子得点もマイナスとなり、自分がなぜいまの仕事をしているのか、その価値を見失ってしまう。 定年が迫り、役職定年を迎える頃、これからの職業人生において何を目標にしていけばいいのか迷う経験をする人は少なくない。そうした現実がデータからうかがえるのである〉(『ほんとうの定年後』より) 定年後の仕事や生活に漠然とした不安を抱く人も多い。 誰かの経験談を聞いても、はたしてそれが自分に当てはまるのかはわからない。 だからこそ、統計データなどから「実態」を知ることで、「定年後をどう生きるのか」についてのヒントが得られるのではないだろうか。 つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部