第三次大戦前夜の世界 トランプ流「力による平和」の内実問われる 試金石はウクライナ 「トランプ2.0」の衝撃①
2期目のトランプ氏に「力による平和」の内実はあるのか。それがすぐに試されるのはウクライナだ。
トランプ氏はプーチン露大統領と即座に停戦交渉を開始するというが、具体的戦略は明言していない。プーチン氏はその前に占領地拡大の攻勢に出るはずだ。ウクライナが多大な譲歩を迫られるような交渉にトランプ氏は本気で動くのか。それとも、プーチン氏を慌てさせる「選択肢」を用意するのか。
■ウクライナには「変貌」期待する声も
「トランプ氏が勝っても、目指すゴールは変わらない。われわれ自身を頼るしかない」
ウクライナ軍の男性兵士(26)は米大統領選を控えた今月4日、交流サイト(SNS)で筆者にこう書き送ってきた。この男性は東部ハリコフ郊外で任務に就いている。
2022年2月、ロシア軍がウクライナに全面侵攻した当日に陸軍に志願した。2年8カ月が過ぎ、露軍の砲撃は激しさを増している。「人々は落胆し、普通でない日常と長引く戦争に疲れ果てた」と男性は語る。
ウクライナの人々は、将来への不安感と重ね合わせて米大統領選の行方を注視した。男性によれば、発言が変わりやすく、プーチン露大統領との親密な関係を誇示するトランプ氏は「信用されていない」。ただ、「トランプ氏がロシアに強硬な態度へと変わることを期待する声も一部にある」という。
「トランプ氏は世界をかき乱す破壊力の持ち主だ」と語るのは国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏だ。トランプ氏の「予測不可能性」に期待する向きは多い。同盟国は予測困難なトランプ外交に何を期待するかより、自ら何ができるかを示すことが重要とミード氏は述べている。
5日の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利した。2期目のトランプ政権が米国と世界に与える影響を分析する。(ワシントン 渡辺浩生)