トランプ氏、バイデン政権の気候変動対策を全面否定へ パリ協定再離脱も 鍵握るマスク氏
米大統領選で勝利した共和党のトランプ前大統領はバイデン政権が進めた気候変動対策を真っ向から否定する方針で、1期目と同様に地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱する可能性が高い。トランプ氏は「どの国よりもエネルギーコストが低い国にする」ことを公約に掲げ、石油や天然ガスの生産拡大を主張。11日から始まる国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)ではトランプ氏への警戒ムードが一層高まるとみられている。 【世界地図でみる】トランプ氏復帰、世界中が注視 ウクライナへの軍事支援に変化も 中国「不確実性増す」 トランプ氏は大統領選中の演説で「ドリル、ベイビー、ドリル(掘って掘って掘りまくれ)」と繰り返し叫んだ。石油や天然ガス開発に対する制限やバイデン政権が強化した自動車の排ガス規制などを撤廃し、パリ協定から再脱退することを公約に掲げた。 大統領選の結果を受け、バイデン大統領はアゼルバイジャンで開かれるCOP29の首脳級会合を欠席する見通し。石破茂首相も国内対応を優先させるために出席を見送る方針だ。 トランプ氏が脱炭素に反発するのは、米国経済の足かせになると考えているからだ。トランプ氏は環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)分野に積極的な企業を支援する投資手法「ESG投資」を「パフォーマンスの悪い詐欺まがいの金融商品」と酷評する。 裏を返せば、トランプ氏はビジネスマンとして「パフォーマンスがよければ」、態度を変えることもあり得るということだ。トランプ氏は、これまで東京電力福島第一原発事故を例に挙げ、原子力発電に否定的だったが、今回の公約では、エネルギーコストの低減策として、原子力の推進を主張した。 昨年のCOP28では、脱炭素の有効手段として、原子力エネルギーの活用が議論された。2050年までに世界の原子力発電設備容量を20年比で3倍とする宣言が発表され、日本を含む米英仏など22カ国が賛同。原子力発電に対する風向きも変わっている。 鍵を握るのが電気自動車(EV)メーカーのテスラを率いるイーロン・マスク氏だ。かつては原子力やEV規制を巡り、トランプ氏と対立したが、今回の大統領選では急接近。トランプ氏は選挙期間中、自らが当選すればマスク氏を要職に起用し、産業の規制緩和や政府の財政削減を担わせると話していた。