今年こそ! 中日“強竜復活”に期待できるこれだけの理由。最下位脱出の生命線は投手力、懸念はやはり二遊間
石川昂弥の覚醒に期待。年間通して起用できれば未来は明るい
打者陣に目を通せば、とにかく打点を稼ぐ中田翔の加入は大きいはずだ。昨季はチャンスを作りつつも、最低限が出来ず40イニング得点ができないという場面もあった。 中田とダヤン・ビシエドが争うファースト争いは、期待値が薄かった代打陣に片方を起用できるというメリットも生じる。ここに今季加入した中島宏之、ユーティリティの山本泰寛が加わったことで、ベンチワークにも幅ができるのはポジティブな要素だろう。 外野手は4年目の俊足・強肩の三好大倫が存在感を放っており、オープン戦では12球団最多安打を放つなど、レギュラーをつかみそうな勢いだ。センターを守れる三好がブレイクすれば、細川、岡林勇希を含めた鉄壁の外野陣が完成する。2000本安打を達成したレジェンド大島洋平を控えに回せれば、代打の強化や来年以降の編成上でも大きい。新外国人のアレックス・ディッカーソンはローボールヒッターであり、ファストボールに明らかに振り遅れる場面もあるなど粗も目立つ。外国人枠の兼ね合いも含めても、ここは三好の台頭に期待している。足がある三好、岡林の1、2番が組めるなら得点パターンは増えてくるはずだ。 3塁は石川の起用が基本線となる。昨季は故障の影響があったなか、13本塁打を放ち才能の片鱗を見せたシーズンだった。一方で疲労からか、シーズン後半は振り切れないような中途半端なスイングをするシーンもあったことも印象に残った。そんな中でも1シーズンを戦い抜いたという経験は、必ず今季につながるはずだ。ケガが心配ではあるが、長距離砲である石川を1年間通して6番辺りで起用できるならば、未来は明るい。控えにはオルランド・カリステや高橋周平もいるが、ここは石川の覚醒に期待する。
最大の懸念は二遊間。それでも「Aクラスのチャンスは十分ある」
最後に最大の懸念事項である二遊間について触れたい。ここ2シーズンのドラフトで5人も“乱獲”するほど、立浪監督にとってはこの2つのポジションの重要性は高い。 候補者を挙げると、田中幹也、村松開人、福永裕基、津田啓史、辻本倫太郎、石垣雅海、龍空、山本泰寛、樋口正修にキューバの育成選手であるロドリゲスと、もはや“渋滞”といってもいいほど選手が集中している。偏重ドラフトとの批判もあるが、首脳陣もその辺りは百も承知のうえで、とにかくこの2つのポジションに目処を立てたいという強い意思も感じる。 立浪監督が求めるのは、大前提として守備力は必須ということはこれまでの起用からも想像がつく。それを踏まえると、2年目の田中やロドリゲスの評価が高いとも読み解けるが、ここではあえて村松と辻本の名前を挙げたい。 村松は昨季98試合に出場している。数字以上にチャンスでのしぶとさや、印象に残る打点も多かった。フェニックス・リーグでも結果を残し、二遊間の争う選手のなかでも打の期待度は高い。気質的にはチャンスメーカーというよりも、7番辺りで打点を稼ぐような起用がもっとも持ち味を発揮できそうな気もする。一方で、走・守でポカも目立っただけに、1年目の経験を生かし、守備面での改善が見られればレギュラー候補の最右翼と見ている。 辻本に関しては、ルーキーで小柄ながら守備面での能力を随所に感じさせ、キャンプからある程度チャンスを与えられている。大学全日本代表にも選出され、「世代ナンバーワン」とも評された守備はプロでも通用しそうな気配を見せている。課題の打撃面も、ここまで意外なパンチ力を見せており、開幕ショート起用も十分考えられるアピールを続けており、そのままレギュラーをつかんでも不思議ではない。不安よりも期待のほうが大きな選手で、ファンの楽しみも広がっている。 長稿となったが、期待込みで前向きな内容で締めくくりたい。3月17日時点で、オープン戦では貯金1。セ・リーグではヤクルトと並び同率1位となっている。たかがオープン戦、されどオープン戦。辛口で知られる球団OBと話していると、ペナントへ向けてこんな言葉も漏れた。 「戦力的にも今年はAクラスのチャンスは十分あると思いますけどね」 そんな金言を胸に刻みつつ、29日の開幕戦を心待ちにしている。 <了>
文=栗田シメイ