メルカリ、プリウス…有名企業の社名も、馴染みの商品も「ラテン語」由来だった!? 【世界はラテン語でできている】
自動車業界で多用されるラテン語
一風変わった由来があるのは、自動車メーカーの「Audi(アウディ)」です。audiは、ラテン語で「聞け」という意味です。英語のaudio「オーディオ」、auditorium「講堂」、audition「オーディション」などの語源にもなったラテン語です。では、どうして自動車メーカーの名前が「聞け」なのでしょうか? これは、創業者のアウグスト・ホルヒ(August Horch)の姓(Horch)が、ドイツ語で「聞け」という意味のhorchと同じ綴りであることが元になっているのです。 「ボルボ」も、ラテン語由来の社名です。volvoは「私は転がす」という意味で、こちらはアウディよりも自動車メーカーの名前としてしっくりくるラテン語です。 次は車名を見てみましょう。こちらもラテン語由来のものが数多くあります。たとえばトヨタの「プリウス」はラテン語で「より前面の、より優れた」という意味を持つpriusが元になっており、その他にも「イプサム」は「それ自身(ipsum)」、「スープラ」は「上に(supra)」という意味です。supraは、英語のsuper-「超」の語源になっています。 車関係でもう一つ付け加えたいのが、タイヤメーカーのミシュランのマスコットである「ビバンダム(Bibendum)」です。よく知られる「ミシュランマン」の呼び名は通称です。ビバンダムの名前の由来は、ミシュランの初期のポスターに、タイヤのキャラクターとともにラテン語でnunc est bibendum「今こそ飲むべし」と書かれていたことです。nunc est bibendumは、ホラーティウスの詩集『カルミナ』の第1巻37歌にあります。これはクレオパトラの敗北とローマの勝利を祝っている内容の詩です。タイヤの広告にもラテン文学からの引用が使われている背景には、当時のフランスではホラーティウスなどの作品が学校で広く使われていた事情があったと考えられます。 * * * 世界はラテン語でできている 著/ラテン語さん SBクリエイティブ 990円 ラテン語さん(らてんごさん) ラテン語研究者。 栃木県生まれ。東京外国語大学外国語学部欧米第一課程英語専攻卒業。ラテン語・古典ギリシャ語の私塾である東京古典学舎の研究員。高校2年生でラテン語の学習を始め、2016年からX(旧Twitter)においてラテン語の魅力を毎日発信している。研究社のWEBマガジンLinguaにて隔月連載中(シリーズ名:名句の源泉を訪ねて)。ラテン語を読むだけでなく、広告やゲームなどに使われるラテン語の作成や翻訳も行っている。
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