マカオの世界遺産・聖ポール天主堂跡が落雷で一部破損…文化局「異例の出来事」
マカオは雨季に入り、このところ落雷を伴う激しい雨もしばしば観測されており、マカオ政府文化局(ICM)が文化財の保護に注意を呼びかけている状況。 マカオ政府文化局は6月24日、同月12日午後1時すぎに世界遺産・聖ポール天主堂跡前で石の塊が発見されたケースについて、初歩調査報告を発表。 同局によれば、当時のマカオは落雷を伴う激しい雨が降り、警報が発令されていた中、聖ポール天主堂跡で短時間の電圧低下が出現していたとし、後に管理員が石の塊を発見するに至ったという。
これを受け、同局の職員が状況確認のため現場へ急行し、記録と安全検査、ドローンによる観測と周辺環境データの収集、消防局によるファサードの近距離詳細検査を実施し、過去の観測センターのデータ、監視映像、歴史記録との対照を行ったところ、発見された石の塊はファサードの上から2層目にある聖人像の設置スペース後方にあったもので、落雷による影響で当該箇所が破損、落下したとの見方を示した。 同局は今回のケースについて、異例の出来事であり、同局に記録が残る中では初めてとのこと。同局が観測センターデータの分析、構造安全評価、聖人像設置スペースの詳細検査を実施した結果、今回のケースによる聖ポール天主堂跡の構造への影響はなく、当該スペースに設置されている聖人像の破損も見つからなかったという。なお、今回落下した石の塊のあった位置は風化の痕跡があり、また周辺はモルタルなどの粘着素材が使われていたことがわかり、聖ポール天主堂跡はこれまで複数回にわたって修復を行ってきたが、初期の修復の対象になった箇所の可能性があることも明らかにした。
同局では聖ポール天主堂跡はすぐ近くにあるモンテの砦より低い位置にあり、また避雷装置も設置されていることから、落雷の影響を受けることは極めて異例だが、文化遺産研究院などの専門機関と文化財保護の原則下で避雷システムの増設などを含む悪天候への対処策を検討していく考え。 聖ポール天主堂跡は17世紀にカトリック・イエズス会が建てた聖母教会及び聖ポール大学のあった場所にあたり、1835年の大火により前壁及び石段の一部を残して焼失し、現在の姿となった。建設作業には日本人キリシタンが関わったと伝えられている。ファサードには幼きイエス像、マリア像、イエズス会のフランシスコ・ザビエルら聖人像など青銅像が設置されている。