「せめて自然に亡くなって…」染色体異常が判明、死産を選んだ母の葛藤【漫画家インタビュー】
念願の2人目の妊娠だったのに、あんなことになるなんて――。日常の出来事や気づきを描いた「日常観察マンガ」が人気の桜木きぬさん(@kinumanga)は、長男と夫の3人暮らし。2人目を考えてから数年後に妊娠がわかり喜んだのも束の間、医師から染色体異常の可能性があると伝えられる。過去に流産した経験から、子どもを失うつらさを知っていたきぬさんは、一度は出産を決意するが……。 【漫画】『わたしが選んだ死産の話』を読む 母の葛藤と命の輝きをリアルに描いた『わたしが選んだ死産の話』(医療法人財団順和会山王病院病院長/国際医療福祉大学グループ産婦人科統括教授・藤井知行氏監修)は、きぬさんが自身の体験をもとに描いたエッセイ漫画だ。第5話では、死産を決めてから出産までの2 週間を描いた。著者のきぬさんに、2人目を妊娠した当時の心境を聞いた。
元気に生まれてくることは当たり前ではない
――死産が決まってから分娩までの2週間は、どのように過ごしていましたか? 出産までは日常生活を送っていました。長男が幼稚園に通っていたので送り迎えをしたり、公園に遊びに行ったり。外出中は、気持ち悪くなることが多かったです。そして、ずっと発熱している感じでした。そんな体調不良状態で出歩きながら、つねに「あぁ、この瞬間にもおなかの赤ちゃんは死んでいるかもしれない」と考えていました。この期間は本当につらかったです。 ――ご長男に説明された際の心境を教えてください。 長男は赤ちゃんが生まれるのをとても楽しみにしていたので、赤ちゃんが産まれないことを切り出すのは難しかったです。まだ幼稚園生だったこともあり、体に悪いことが起きても「病院に行けば治る」って思っていたみたいで。だから「あんなに病院に行ったのに、薬もたくさん飲んだのに、どうしておなかの赤ちゃんは治らないの!」と怒っていました。なので、赤ちゃんが元気に生まれてくることは当たり前ではないんだよ、と一生懸命伝えました。少し泣いたあと、最後には「しょうがないことならしかたないね」と受け入れてくれましたね。 ――おなかの赤ちゃんの「フウ」という名前の由来を教えてください。 長男の名前が自然由来なので、対になるように「フウ(風)」と名づけました。 ――入院当日、どのような気持ちで朝を迎えましたか? 感情をあまり動かさないようにしていました。実家の母が来てくれたり、やらなければいけないことがあったり、それなりにバタバタしていたので気は紛れていました。 命について静かに問いを投げかけてくれる『わたしが選んだ死産の話』。きぬさんがどのように死産という選択に至り、その事実と向き合ったのかをご覧いただきたい。