五輪出場を相次いで逃す韓国 サッカーもバスケもバレーも 超少子化社会が抱える苦悩
五輪スポーツの団体球技で韓国の不振が深刻だ。サッカー男子は、東京大会まで続いていた連続出場が9大会で途切れ、団体球技で出場権を得たのは、ハンドボール女子だけ。背景には、「超少子化」の社会がある。現場を訪ねると、危機感が広がっていた。(稲垣康介=朝日新聞編集委員) 【写真】韓国で子どもの入店を断る「ノーキッズゾーン」を掲げる店の表示
「人口が減ればスポーツをする人が減るのも当たり前」
4月20日、ソウル市南部にある仁憲高校の体育館では、バスケットボールの試合が開かれていた。 プレーを見ていると、明らかに一方のチームの選手の体格が一回り細い。仁憲高校の対戦相手は、近くの私立中学のバスケ部だった。以前は対戦相手だった高校のバスケ部が廃部になり、スカウトも兼ねて中学生と練習試合をするという。 「私が子どものころはソウル周辺だけで、バスケ部がある小学校が20校以上あった。今は3校だけです」と仁憲高校のバスケ部顧問、シン・ジョンソクさん(48)。中学、高校も先細りの傾向は変わらない。 シンさん自身は3人兄弟で、今は3人の娘の父だ。ただし、中学3年の長女と中学1年の次女はバスケはやらず、小学2年の三女だけが楽しんでいるという。「妻はバスケに乗り気ではなかった。勉強が大事だと」と苦笑いした。 女子バスケットボールの元韓国代表、チョン・ジュウォンさん(51)を訪ねた。2000年シドニー五輪の切符をかけた大一番で日本を破り、本大会もベスト4まで勝ち上がったときのスター選手だった。 今は国内女子リーグの強豪、ウリ銀行でコーチを務めるチョンさんは「バスケ部に5人しかいない高校もある。反則で退場になれば、4人で試合をすることもあると聞きます。出生率は0.72でしょう。人口が減れば、スポーツをする人が減るのも当たり前」 出生率が1を下回るのは、先進国が名を連ねる経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国で、韓国だけだ。 昨年、韓国でも日本の人気バスケ漫画「スラムダンク」の映画版が公開されて大ヒットしたが、「特効薬にはなりません」。一人っ子が多く、スポーツより勉強を優先させる風潮が強いという。日本以上に学歴社会といわれる韓国の現実がそこにある。 そして、少ない分母を競技間で奪い合う。中学・高校バスケットボール連盟によると、背の高い有望なバスケ選手をバレーボールのチームが引き抜く動きがあるという。