韓国に広がる期待と疑念-小さな地質会社が石油・ガス埋蔵可能性指摘
(ブルームバーグ): ビトル・アブレウ氏は地質学者だが、韓国ソウルに先週到着した際、空港ではカメラのフラッシュと多数の記者に迎えられ、まるでスターのようだった。
米テキサス州ヒューストン郊外に本社があり、14人のコンサルティング会社の責任者を務めるアブレウ氏は、韓国沖で世界最大級の石油・ガスが埋蔵されている可能性を指摘。懐疑的な向きもある中で、韓国内で思いがけないエネルギー源への期待に拍車を掛けた。
尹錫悦大統領は3日、今回の発見に関して発表。テレビでも放映され、割高な燃料輸入に苦しむ同国内で関心を呼んだ。化石燃料を利用することで、気候変動を巡る目標が数十年も後退する恐れがあることを意味したとしても、エネルギー安全保障が世界的にどれほど優先事項になっているかを改めて浮き彫りにした。
政府案によると、韓国は2022年にわずか9%にとどまった電源構成における再生可能エネルギーの割合を、38年までに約3分の1まで引き上げるとともに、原子力を最大の発電源にすることを目指している。一方、現時点で電源構成の大半を占めている化石燃料の使用は同期間に急減する方向だ。
それでも韓国政府は潜在的な石油・ガスの埋蔵に高い関心を寄せている。尹大統領は埋蔵量が最大140億バレルに相当するとし、韓国全体が使える量としては天然ガスが最大29年分、石油は最大で4年以上の消費量を賄えると説明。この発表で、韓国の石油・ガス株は大きく値上がりし、ソーシャルメディアでも数日にわたりトレンド入りした。
たとえ成功したとしても、稼働までに7-10年かかるほか、韓国がカーボンニュートラルの実現を目指す50年を過ぎても石油・ガスを生産し続けることになる。
アブレウ氏は期待の管理に努めている。韓国南東沖の海盆には「大きな潜在力」があるとしながらも、試掘中に燃料が採掘される可能性は20%に過ぎないと話す。独立系の専門家によると、これは業界の標準と見なされる確率だ。