実質賃金が2年連続でマイナス…近年、物価高に苦しみ続ける日本、景気回復の秘策はあるか?
TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「FLAG NEWS」のコーナーでは、2年連続でマイナスとなった“実質賃金”について取り上げました。 ◆現金給与額は増加するも、実質賃金は減少 昨年度の1人あたりの実質賃金は、月平均で前年度2.2%の減少となりました。実質賃金とは、労働者が実際に受け取った給与である「名目賃金」から物価変動の影響を差し引いて算出したものです。厚労省が発表した「毎月勤労統計調査」の昨年度分のまとめによると、名目賃金に相当する現金給与総額は増加傾向ですが、円安や原油高を背景とする物価高騰に賃金上昇が追いついていません。マイナスは2年連続で、消費税率引き上げなどの影響があった2014年以来の落ち込みです。 ◆実質賃金2年連続マイナス…識者はどう見る? このトピックに関し、コラムニストの河崎環さんは「少し前に日本の製造業が好調であったことの結果」と指摘します。なぜなら、「日本の製造業が好調であるということは、基本的に円安と実質賃金が減っているがゆえの見かけ上のかさ上げだから」とその理由を解説。そして、「一般的に業績好調と聞くと嬉しいと思ってしまうが、その反面、経済の原理としては、実際は我々にとってネガティブなニュースもある」と言います。 キャスターの堀潤は「今年の春闘は、企業は(賃金の引き上げを)目一杯やったと思う」と企業側の努力を評価し、「それでも(賃金が)物価上昇を上回れないということは、民間の努力だけではダメで、抜本的な改革が必要。政治の出番なのではないか」と主張。 この意見に、元宮崎県知事で元衆議院議員の東国原英夫さんも賛同しつつ「特に中小企業(の賃金)が上がっていない。そのためには、政府が価格転嫁を誘導しないといけないと思う」と私見を述べます。 堀曰く、日本中で実質賃金が減少するなか、大分県と群馬県のみ上昇しているそう。その背景には、徹底的な企業支援があり、両県とも賃金を上げた企業には優遇策を投入するなどしているとし、「群馬ではデジタル化、大分では宇宙港のような新しい産業だったり、(経済を回す)エンジンがあり、明確な政策が打ち込まれている」と補足します。 「The HEADLINE」編集長の石田健さんは、実質賃金上昇の手段として近年アメリカなどで叫ばれている“モダン・サプライサイド・エコノミクス”を提案。「これは、教育やインフラ、グリーンなどに政府がある程度決め打ちで大きく支出するというところで、(支出先は)伸ばしたい産業かつ成長が見込まれる産業、かつESGなどの理念に叶う産業を目指している。既存の支援、優遇策や補助金というアプローチもあるが、政府が予算から投資、発注していくことも大事であり、今こそそれをやる必要があると思う」と話します。 堀によると、フランスでは物価が上昇するとその分自動的に最低賃金に反映され、引き上げられるそうで、1年間に3回最低賃金が上がったこともあるとか。対して日本では年に1度春闘で上がるかどうかが話し合われるのみで、場合によっては上がらないこともあり、堀はそんな日本の現状を憂いでいました。