医者から「卵子がほとんどない」「妊娠は難しい」と言われ涙が止まらず…27歳で“卵巣がん”を経験した女性(32)が“奇跡的に出産”するまで
――わずか1年ほどの間にがんと妊娠を経験したということですよね。 長藤 それこそ出産で入院したとき、配膳のワゴンの音がすると、つわりもなかったのに急に吐き気が止まらなくなったんです。その音が、抗がん剤治療の記憶を呼び戻すスイッチみたいな感じで作用したというか。 ――トラウマのような感じで。 長藤 がんで入院していた時、病室に1日3回ワゴンが入ってくるんですけど、四六時中吐き気がある中で、生温かいご飯のにおいとか、周りの方の咀嚼音とかが本当にダメになってしまって、耐えきれずに個室に移動したほどだったんです。 退院後は家の食卓でもなんの問題もなかったんですけど、自分が病室のベッドにいるあの空間でワゴンの音がすると、それだけで吐いてしまうという。自分でもそんなことがあるのかとびっくりしました。
がんを経験して、美容にお金をかけるようになった理由
――がんを経て気をつけるようになったことや、新たにはじめたことは何かありますか。 長藤 病気をする前までは美容にお金をかけるのは無駄だと思っていたんですけど、退院後、田中みな実さんがオススメしていた美顔器を買いました(笑)。 ――治療で肌に影響があった? 長藤 抗がん剤の副作用でそばかすやシミがすごい増えたんです。あと、点滴を数百回打ったために腕中あざだらけになってしまったので、少しでも肌を元に戻したいという思いで買いました。 あと、まつげが生えてくるように初めて「まつげ美容液」というものを買ってみたり、爪も真っ黒になってしまったので、それを隠すためにネイルをしてみたり。意外とそれが楽しくて。がんになって初めて美容にお金をかける習慣ができたのはあるかもしれないですね。
髪もまつ毛もなくなって、鏡を見るたびに泣いていた
――闘病中は脱毛などで見た目にもかなり変化があったんですね。 長藤 髪も眉毛もまつげもなくなりました。そうすると本当に顔の印象が変わってしまって、鏡を見るたびに泣いていた時期もありました。 少し体調がいいとき、メイクポーチを引っ張ってきてあえてめちゃくちゃ濃い化粧をして、「ICONICみたいでイケるじゃん」って自分を励ましたりして。 ――闘病中の姿を人に見せることに抵抗があった? 長藤 闘病中は姿を消してひとりで耐えて、元気になった後、何事もなかったかのようにみんなの前にフラッと戻りたかったんです。SNSでも闘病中の自分の姿は一切載せませんでした。ちょうどコロナ禍で面会謝絶の時期だったことも、私としてはありがたかったですね。 ――今のパートナーの前でも闘病姿はほとんど見せず? 長藤 テレビ電話でときどき話していましたが、彼の前では一度もウィッグを取ったことがなくて。それこそ退院して1年半くらいは、お風呂に入るときも寝るときも一度もウィッグを取らなかったくらい、徹底していました。 彼は「気にしない」と言ってくれていましたが、パジャマでニット帽をかぶっている姿を彼の印象に残したくなかったんです。