朝ドラ「ブギウギ」最終回の前に早すぎる全体総括 「音楽朝ドラ」真骨頂に向けた趣里と伊原六花の功績
逆にいえば、『大空の弟』を除く、ステージ上での多くの歌唱シーンは事前録音、いわゆる「口パク」ということになる。 だからといって、例えば『ラッパと娘』の初出回(11月10日)の価値が減じられるものではないし、事前録音ゆえに激しく歌い踊ることができたのだが、視聴する側はまことに現金なもので、『大空の弟』の生歌の迫力を一度味わってしまったことも、それ以降の事前録音した歌唱シーンへの視聴テンション低下につながってしまったように思う。
■『ブギウギ』とは、一言でいえば… さてここからは、「早すぎる全体総括」を進めていくのだが、その大前提として、とにもかくにも『ブギウギ』とは、一言でいえば趣里の奮闘だった。 朝ドラのヒロインには4度目の挑戦、2471人が応募したというオーディションにおいて、募集年齢上限の32歳で選ばれたという(現在は33歳。見えないが)。大抜擢と言わざるを得ない。 4歳からクラシックバレエを始め、中学卒業後にはロンドンの名門バレエ学校へ留学するも、大けがをして諦めたという経歴を知っていたので、踊りについては安心していたのだが、歌は正直、期待を大幅に上回った。
また関東出身にもかかわらず、大阪弁も日に日に上手くなっていった。途中からは、独特の大阪弁特有の「フラ」(落語用語でいう「独特の愛嬌、おかしみ」的な意味)も身に付いてきた。 ただ、あまりにハマり役すぎた感もあり、実際、WOWOWで並行して放送された『東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた』(2023年)を見ていたら、まるで福来スズ子が編集者役をやっているような錯覚をしてしまった……。 でも今後、抜群の芸能運動神経で福来スズ子の幻影を乗り越え、様々な役回りで新しい姿を見せてくれることだろう。
■『ブキウギ』をアワード形式で振り返る 以下、『ブギウギ』のあれこれを、アワード形式を通じて、さらに細かく振り返っていく。ただ、あくまで個人的な意見なので、みなさんも自分ならではの評価をして、楽しく振り返っていただきたい。 まずは「助演賞」の発表(スペースの都合で「助演女優賞」に絞る)。ヒロインのライバル的ポジションの準主役として、長く出続けた菊地凛子(1月5日の特攻隊を送り出すシーンが白眉)は別格に措くとして、ネイティブ大阪人として、ヒロインの快活の母親役を見事に演じた水川あさみ、前半戦を彩った翼和希、蒼井優、後半、雰囲気をピリリと締めた木野花を抑えて、助演賞は伊原六花に差し上げたい。