組織のリーダーが不倫…。道ならぬ恋のお相手を重用するのはあり? 歴史上にもいた「恋愛脳キツめリーダー」
マンガ編集者の経験を持ち、作家業の傍らマンガ原作も手掛ける堀田純司氏が、ちょっと困った「今ドキ上司」や「あるある経営者」を歴史をさかのぼってケーススタディとして紹介する「こんな上司は嫌だ」。 今回のテーマは「恋愛脳キツめリーダー」です。組織のリーダーがお気に入りの部下たちで周囲を固める「お友達内閣」という話はよく聞きますが、夫婦や恋人、道ならぬ恋のお相手を重用する事例も少なくありません。 その人事が成果に結びつけば良いのですが、適材適所でない単なる公私混同は、組織を弱体化させるようです。
私情をビジネスに持ち込んだ女帝・孝謙天皇
ごく私的な関係性をビジネスの場に持ち込むのはNG。今さら筆者などが語ることもない常識で、だから本当に優秀な人は職場でややこしい事件を起こしたりはしない。はずなのですが、これが後を絶たない。 しかもそれが当事者的には「愛と苦悩の美しい話」だったりします。 筆者などは上司との道ならぬ恋について、まるで映画かなにかの主人公のように語る同僚に「でもそんなだとあなたの企画、情実採用だと思われてもしゃあないですよ」と、どストレートに指摘してしまい、イタリア料理店でコップの水をかけられたことがあります。 「正直過ぎるのもアホのうち」という故郷の格言を思い出すところです。 そもそも人間が社会的な生物である以上、私的な親近感がビジネスの場に影響を及ぼすことは、これは当然なのかもしれません。
歴史を遡れば、「個人的にかわいがっている部下を重役に引き上げた」どころか、「トップの座を譲り、自分も導かれる立場になろうとした」という"事件"もありました。 そう、自分が帰依する僧侶、道鏡を天皇にしようとした奈良時代の女帝、孝謙天皇です。 この人のお父さんはあの東大寺をつくった聖武天皇。お母さんは藤原氏の出身で、皇族以外からはじめて立后し「皇后」となった、光明皇后です。 孝謙天皇自身は史上6人目の女帝ですが、皇太子経由という「規定路線に乗って天皇になった女帝」としては、初の人でした。 孝謙天皇と道鏡の出会いのきっかけは「祈祷」。体の調子がよくなかった孝謙天皇のために内供奉禅師(当時)の道鏡が「宿曜秘法」を修して看病した。これを契機にしてふたりは出会い、天皇は道鏡を「寵幸」するようになったのだそうです。 もっとも孝謙「天皇」と言っていますが、すでに当時は退位して、淳仁天皇に位を譲っており、孝謙太上天皇(太上天皇、略して上皇)というのが正しいところ。